為替と先物と需給と外国人投資家に翻弄され、押し目買いと利食い売りの狭間に揺れる「日経平均ワールド」と、日本を代表する主要産業を代表する主力銘柄を中心に、業績観測などで好材料が出れば素直に買われ、悪材料が出れば素直に売られ、個人投資家も参加した中・長期展望のグロース投資で将来の有望株が地道に拾われていく「TOPIXワールド」。2013年は後者がまだ弱く、そのすき間を〃連想ゲーム〃のようなテーマ物色、超低位株や仕手系のマネーゲームといった「キワモノワールド」が埋めていた観もあったが、2014年は「まじめでコンサバな人」を株式市場に連れてくるNISAの効果も手伝って、ようやく日経平均ワールドとTOPIXワールドの勢力分布が形の上でイーブンになってきた。毎日の売買代金が2兆円台に定着し、伝統があり大きくて有名なコンサバ系銘柄、証券コードで言えば「01銘柄」「02銘柄」が人気を集めていることがそれを裏付ける。
その「二面性」を如実に物語るのが、日経平均とTOPIXの騰落率の違い。1月10日と17日の終値を比較すると、日経平均は1.11%下落したが、TOPIXは0.08%とごくわずかな減少にとどまった。大発会の6日以来9日間の日中値幅(高値と安値の差)を見ても、日経平均は200円を超えて変動した日が4日もあり、前週の4日間も2日あったが、数値が日経平均の約12分の1(NT倍率)のTOPIXが16ポイントを超えて変動した日は2日しかなく、前週はゼロだった。1日のチャートを見比べても、日経平均がTOPIXとほぼ連動して動く時間帯と、独自に動く時間帯がある。前者が「水平飛行」やゆるやかに上昇、下落する局面で、後者が先物主導の急騰や急落が起きる局面である。
そんな相場は値動きを予測しにくい。雇用統計やFOMCや日銀会合のようなイベントの結果にからめて予想がつくわけでも、昨年末の節税対策売りやNISA買い開始のような需給要因で単純に推し測れるわけでもない。裁定買い残などは年がら年じゅう高水準で、言ってみれば噴火口の際でのダンスがずっと続くようなもの。そのため急騰も急落もするが実は底堅いという、複雑な要素をはらむ。
それでもあえて今週の日経平均を左右しそうな材料を挙げるとすれば、20日に多くが集中し23日には過去に何度も煮え湯を飲まされたHSBCのPMI速報値が発表される中国の経済指標、週後半に発表されるアメリカの住宅関連指標、IT関連企業が多くなるアメリカ主要企業の10~12月期決算、そして3月期決算企業の4~12月期(第3四半期)決算を先取りした業績観測報道あたりだろうか。21~22日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和策が飛び出す可能性は薄く、23日告示の都知事選の候補者はすでに出揃い、24日に通常国会の開会を控える上に安倍首相は外遊続きで、政策サプライズもなさそうだ。
世界経済の急所とも言える中国の経済指標がさほど落ち込むことなく通過し、アメリカの景気判断の急所とも言える住宅関連指標が悪化をみせず、アメリカのIT企業の決算に特段悪いものがなくNYダウは16000ドル台を堅持し、さらに日本の大手企業に「過去最高益」の業績観測報道が続出すれば、週後半のドル円の105円台復帰、日経平均の16000円台復帰が現実味を帯びてくるだろう。
もし、それとは逆の結果が続出してドル円が円高方向に1~2円程度振れたとしても、よほどのことがなければ終値ベースで15600円を割り込む事態はないとみてもよいのではないか。その根拠は、14日の日経平均終値15422円に「下がりすぎ」と意外感を示す市場関係者のコメントが続出したことで、その背景には、年明けから堅実なTOPIXワールドが拡大している状況もあるのだろう。
ということで、国内外の経済指標や企業決算に一喜一憂し、一進一退しながらも今週の日経平均終値の変動レンジは15600~16000円とみる。ちなみにTOPIX終値の変動レンジは1290~1310とみる。(編集担当:寺尾淳)