九州大学と、安川電機<6506>(北九州市)、そして機械器具製造の菱計装(りょうけいそう)(長崎市)などにより、騒音や環境への負担が少ない小型電動航空機の実用化に向けた走行実験が計画されている。こうした電動航空機は今、世界中で研究が進められているが、なかなか実用化には至っておらず、九州大学大学院の麻生茂教授(航空宇宙工学)は、「5年後には、実用化を目指したい」と話している。
計画によれば、電気自動車(EV)用モーターと電力制御装置、EV用リチウムイオン電池などを、改造を行った既存の小型飛行機に設置し、大分県央飛行場(大分県豊後大野市)の滑走路で陸上走行をする予定だ。モーターの回転数、推力、また電流や電池の状況といった基礎データを測り、加速性能や推進システムなどの性能に関してもチェックを行う。
今回の実験は、2013年に長崎県の補助金事業に採択された。安川電機がモーターと制御装置を貸し出し、菱計装が自社の持つ電源制御システムの技術よりに電池などと繋ぐ。そして九州大学は小型飛行機を提供し、データの計測や解析などを担当する。麻生茂教授は、「実験で得たデータを基に、試作機の開発に繋げたい」との考えを示している。また安川電機は事業性も考慮し、電動航空機専用モーターの試作なども検討するとのこと。
麻生茂教授によれば、「電動航空機は電気自動車に続く新しい交通技術として注目を集めているものの、モーターの軽量化や、さらにはバッテリー性能の向上などに、まだまだ課題が残されている」とのことで、それらの開発に関しては、欧米や中国などの方が進んでいる。
九州では、九州大学が中心となり、4~6人乗りの小型電動航空機を設計。風洞実験を実施し、10分の1スケールの無線操縦飛行機でもって性能を確認している。麻生茂教授は、「航続距離500キロを実現し、九州に多い離島と県都間や、県都と県都を結ぶ4~6人乗りのエアタクシーとして、事業化できれば」と将来の展望を語っている。(編集担当:滝川幸平)