【リチウムイオン電池 2014年の展望】自動車用は自動車メーカーと密着した研究開発体制が威力を発揮するはず

2014年01月06日 17:59

 富士経済の「電池関連市場実態総調査2013」によると、世界のリチウムイオン電池市場は2014年は1兆2137億円に達すると予測されている。2017年には1兆7451億円に拡大する見通しで、拡大ペースは3年間で約5千億円で成長。しかこれにはすでに普及が進んでいる携帯電話などの小型電子機器用も含まれている。大型の車載用リチウムイオン電池に限れば、2014年に6579億円、2015年に9521億円に達すると見込まれている(矢野経済研究所の予測)。年率にすると成長率は44.7%にもなる。

 かつて世界シェアの約90%を有していた日本企業も、携帯電話用など小型のリチウムイオン電池ではサムスンSDI、LG化学などに押されて、国別では韓国に逆転を許している。この分野はコモディティ化(汎用品化)が進んでいるため、中国製の安い材料を使ってコストダウンを図り世界中に販路を広げている韓国勢の後塵を拝してしまっている。それは、日本製の太陽電池市場が安価な中国製などに押されて世界シェアを大きく落としていった軌跡に重なる。

 日本勢の活路は、やはり高度な技術力が必要になる自動車用など大型のリチウムイオン電池にある。自動車用なら1回の充電でどれだけの長時間走行が可能か、時速200キロが出せるぐらいのパワーが出るか、充電時間をどこまで短くできるかといった技術課題が山積み。もちろん安全性は必須の条件で、HV、EVの普及のためには低コスト化も欠かせないだろう。そこではGSユアサ<6674>と三菱自動車<7211>、パナソニック<6752>とトヨタ自動車<7203>というように、電池メーカー、自動車メーカーの技術者が交流し、お互いに密着して共同して進めている現在の日本勢の研究開発体制が、大きな威力を発揮するはず。韓国勢や中国勢が日本勢になかなか追いつけないのは、この点である。

 2014年、期待できるのはまず日立製作所<6501>で、年の半ばにも自動車用リチウムイオン電池の製造拠点を京都府大山崎町に新設する。稼働すれば生産能力は茨城県の東海工場と合わせて現在の3倍の月産100万個に増える。現在は日産<7201>、GEの乗用車といすゞ<7202>のトラックに供給しているが、さらに国内外の数社とHV用に電池を供給する交渉を行っているという。

 パナソニックと組んでいるトヨタは2014年1月、ドイツのBMWとリチウムイオン電池の次世代モデル「リチウム空気電池」や軽量化技術など複数の分野で協力することで合意する。

 電子機器用の小型電池でも12月末に新たな動きがあった。1991年に世界で初めてリチウムイオン電池の実用化に成功したソニー<6758>は、韓国勢の攻勢を受けて採算が悪化した電池事業の売却を検討し、政府系ファンドの産業革新機構から日産自動車<7201>、NEC<6701>との電池事業統合への参加を打診されて話し合いを続けてきたが、それを白紙に戻して売却を見送り、事業を続行すると報じられた。円安や新製品の受注増で事業環境が改善し、スマホやウエアラブル端末など成長性の高い機器の開発に役立つ電池事業は分離せずに中核事業に育成した方が得策だと判断したという。この分野も韓国勢に押されっぱなしのままではなく、ソニーを先頭に日本勢の反撃が始まりそうだ。(編集担当:寺尾淳)