23日、ソニー<6758>は医師向けの情報サイトを運営するグループ会社エムスリー<2413>と、そして遺伝子解析装置で世界最大手の米イルミナと、ヒトゲノム(全遺伝情報)の研究を支援する「ゲノム情報プラットフォーム」を国内で立ち上げるための協業に関して合意したと発表。エムスリーはソニーが40.1%出資しており、米イルミナと2月末までに合弁会社を設立し、日本でのヒトゲノム研究を支援するサービスを開始する。
ゲノム研究は、人のゲノム情報に関連する医療情報や健康情報と合わせて解析を行うもので、疾患の原因解明や新しい医薬品の開発、また新しい治療方法の開発にもつながる可能性を秘めている。
新しく設立される合弁会社は「P5(ピーファイブ)株式会社」と名付けられる予定で、出資総額は2億3750万円。その過半をソニーグループが出資する。そしてP5の社長にはソニーの元業務執行役員である大塚博正氏が就任する予定だ。
このP5では、研究機関や企業などから治療の履歴や服薬の履歴といった、パーソナルな医療情報・健康情報を収集し、それを米イルミナの装置を利用して解析を行ったゲノム情報と共に蓄積し、研究機関や製薬会社などに提供し、新医薬品の開発や新しい治療方法の開発に役立ててもらうことが狙いだ。将来的にはインターネット上で情報処理を行う「クラウド技術」を活用し、そうやって蓄積したゲノム情報を販売したり、セキュリティー分野に応用する計画だ。
国内でのゲノム解析市場は100億円弱とされており、その市場は今後も拡大が期待されている。
テレビやパソコン事業での再建において足踏みを余儀なくされているソニーは、今回のこうした医療事業でもって、新しい収益源を確保したい考えがあるようだ。ソニーの斎藤端執行役EVPは、「メディカル事業は将来的に事業の柱の1つとして育成していくと考えている。日本の医療の発展に資するゲノム研究支援を可能にし、将来的には医療分野で新しいサービスプラットフォームを構築したい」とコメントしている。(編集担当:滝川幸平)