株式会社JTB首都圏は、70歳代の高齢者が、ちょっとリッチで高品質な旅行を楽しめる国内旅行「ゆとり紀行」をリニューアルした新コースを2014年度上期商品として1月21日に発表した。
70歳代と言えば、高齢者の方には大変な失礼な話ではあるが、少し前まではマーケティングの対象外の世代であった。しかし、今やシルバー世代へのアプローチは、業界・業種を超えて熱を帯びている。
シルバー世代が注目を集めるのは、その金融資産の豊富さと高齢者の比率の増加にある。少し古いデータであるが、全国銀行協会が作成したレポートによると、60歳から69歳の世帯の平均金融資産は2,367万円で、70歳以上の世帯では、2,586万円であり、若い世代を大幅に上回っている。
更に、30代から50代の世代に比べると、子供を大学にまで行かせる教育費用や住宅取得費用など1000万円を大きく超えるような大型支出は、既に終えてしまっており、所有している金融資産の可処分性は極めて高い。
そして、今、団塊の世代は、65歳を迎え急速に高齢者人口が増加している。総務省によると、13年度の時点で65歳以上の高齢者人口は3,186万人で、総人口に占める割合は25%を超えた。さらに、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、約20年後の35年には高齢者の比率は33.4%に達し3人に1人が高齢者になる見込みである。
JTBがなぜ、人口ボリュームの大きい団塊の世代を超えて70歳代にターゲットを絞っているのかは不明だが、今から、数年後をにらんで、高齢者の体力面、健康面や趣味・嗜好が旅行に与える影響などのノウハウを蓄積して、より良い高齢者向け旅行パックを企画しようとしている可能性が考えられる。
また、高齢者向け旅行ブランドの確立・浸透による差別化に動いているとも考えられる。振り返ると、過去、団塊の世代は日本の文化、社会、政治、経済などあらゆる方面に大きな影響を及ぼしてきた。そして、また歴史に残る変化を与える時期が近付いているのかも知れない。高齢者、とりわけ団塊の世代を意識したマーケティングは、今後さらに重要性を増していくに違いない。(編集担当:阪木朱玲)