任天堂の2013年度の営業利益も赤字になりそうだ。先月の経営方針説明会で業績見通しが発表され、売上高は09年度の半分以下の5000億円を割り3期連続で営業損失となる見込みであり、ソフト・ハード一体型のビジネスモデルの立て直しが急務となっている。
13年度の売上高では、WiiとニンテンドーDSなどのハードの販売が大きく減少し、海外の売上の落ち込みも大きく全体の売上を押し下げた。また、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が昨年11月に欧米で発売した据え置き型ゲーム機のプレイステーション(PS)4が爆発的に売れた影響もあると見られている。
任天堂のビジネスモデルはハードとソフトの一体型のビデオゲーム専用機プラットフォームを経営の中核とするもので、簡単にいうとハードを普及させソフトで儲けるモデルである。その爆発的成功例はファミコンとスーパーマリオブラザーズだ。また、近年ではニンテンドーDSの2画面タッチスクリーンや、WiiにおけるWiiリモコンやバランスWiiボードなど、ゲームの多様な楽しみ方を提案しており、DSの「脳トレ」では生活の質を向上させるための娯楽を提案するという進化も見せている。
しかし、今やインターネットの普及とともに携帯電話やスマートフォンなどでゲームが楽しまれる時代になった。ゲーム機の主役は、ゲームセンターのアーケードマシンから、家庭のTVにつないだ据え置き型ゲーム機、携帯ゲーム機、そして携帯電話やスマートフォンへと変化している。そして、インターネットを通じてSNS上で提供される、いわゆるソーシャルゲームが飛躍的に成長して据え型ゲーム機の強力なライバルとなり、同社の主要な顧客であるライトユーザーはソーシャルゲームへと流れ出している。さらに据え型ゲーム機では、海外でPS4の勢いが強くゲーマーも取り込まれつつある。また、PS4は今月国内で販売される予定であるため、同社にとっては増々厳しい状況となりそうだ。
この苦境を乗り越えていくために、Wii Uの発売当時から提供しているオンラインサービスを強化するとしている。これは同社独自のゲームのためのSNSといえるもので、様々な情報が提供されるとともにユーザー同士の交流ができる。同社としては、このネットワークによりユーザーとの繋がりを深め、新たなサービスの提供などで囲い込みを図るつもりだ。
また、スマホにソフトを単純に供給するモデルではなく、スマホを利用して顧客との繋がりを新たにつくる、方策も模索している。さらに、ユーザーの利便性を高めるために携帯ゲーム機と据え型ゲーム機との連携や、利用者の拡大のために生活の質を向上させる目的の娯楽をテーマにした事業の強化も検討されており、今後の業績回復を目指している。(編集担当:久保田雄城)