任天堂の業績悪化は一過性のものか? 

2014年01月22日 19:05

 任天堂<7974>がファミリーコンピューターを販売開始したのは、1983年7月15日である。昨年の2013年でちょうど30年を経過したことになる。任天堂は、この間に家庭用ゲーム機の世界の覇者となり、2009年には連結売上高1兆8386億円、営業利益5553億円と最大の売上と利益をあげ、この世の春を謳歌していた。

 しかし、そのわずか4年後の14年3月期の業績予想を、任天堂は1月17日に従来予想から売上高を9200億円から5900億円へ約3分の1もの大幅ダウンし、営業利益に至っては1,000億円の黒字から一転して大幅赤字の350億円へと下方修正をした。この落差は、経営者の見通しの甘さにも起因するが、かつての1人勝ちと言えるほどの圧倒的に顧客に受け入れられたビジネスコンセプトであっても、決して永遠に続くものではないということを見事に露呈してしまった。

 日経BP社は、日経ビジネス誌上で、売上高と総資産額ランキングの上位企業を「繁栄を謳歌している企業」と規定し、その平均的繁栄時間を計測するという方法で計算すると、企業が繁栄している期間は27年間であると述べている。任天堂の場合は、ファミリーコンピューターの発売開始からほぼ30年であるので、日経BP社の計測方法した方法ではないが、期せずしてほぼ同じ期間で凋落したことになる。

 任天堂の業績悪化は、一過性の可能性もあるが、いつまでも繁栄が、例え揺るぎないビジネスコンセプトであったと思われても決して永遠に続かないことを示してしまったと言える。しかも、そのビジネスコンセプトが強固と信じていればいる程、成功神話にこだわり続けることになり、その呪縛から逃れられずに業績を回復させらないというジレンマに陥るのである。まさに、現時点では任天堂もその轍を踏んでいることになる。

 今後、今までの任天堂の成功神話であるゲームは、ゲーム専用機で遊ぶものであり、だからゲーム専用機用の面白いゲームソフトを作れば良いという思い込みを解かねならない。なぜなら、スマートフォンやタブレット端末で遊ぶというソーシャルゲームが今やメインになりつつあり、既にオンラインゲームの12年の国内市場規模は、家庭用ゲーム機市場を抜いたと言われている。そして、どんな繁栄も永遠では有り得ない事実は、今、絶好調の業績をあげている企業にも当てはまることを認識しなければならない。(編集担当:阪木朱玲)