世界3位のたばこメーカー「JT」(世界シェア15%)を代表するブランド「メビウス」。昨年、マイルドセブンが名称変更して生まれた商品で、JTの国内販売の半数を占めるという。なお、世界シェア1位のメーカーは米フィリップモリス社(同26%)。2位は英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(同19%)。
日本たばこ産業(JT)が4月からの消費増税に伴って実施する「たばこの価格改定」を発表。107銘柄を10円ないし20円値上げする。この件について、同社は、「増税分を適正に価格へ転嫁するためのもの。10円単位の値上げ」は自動販売機に対応するためと説明した。
20円値上げを行う銘柄の選定について、「販売規模やお客様の受容性を考慮した」としており、ある意味でJTが20円値上げに耐え得る製品を恣意的に選んだといえる。メビウスはJTたばこの約半分を占める看板ブランド、メビウスについて同社は、「引き続きブランド価値向上のための施策を実施する」と説明。この売上の約半分を占めるメビウス(410円から430円への値上げ/値上げ率は約4.9%)をはじめとする20円の上乗せは、消費増税を理由とした便乗値上げなのは明白だとする意見が大勢を占める。
対してJTは、「消費動向や過去の値上げ銘柄の販売動向を踏まえ、JT製品内で小売定価の高い製品から安い製品、値上げ幅の小さい製品へのシフトが起こることを考慮した」というのだ、が……。 要は値上げ後に、一部の消費者が安いタバコを買うことで、高価格帯の販売数量が減るなどJT製品の販売構成比が変わり、結果的に消費増税分の値上げ率に落ち着くというのである。
確かに最大の値上げが実施された2010年のたばこ増税の際、値上げ幅の大きかった「セブンスター」「ピース」は販売構成比がやや下がったという。が、値上げで安価な製品へのシフトが毎回起きているわけでもない。前回増税時に比較的価格設定を低く抑えたメビウス(旧マイルドセブン)についてJTが、今後「積極的な販売促進活動」を実施し、販売シェアが拡大すれば、増税分とは別の単価上昇効果が出現することも考えられる。
ただ、成人の喫煙率は年毎に低下しており、今回の値上げが引き金となって、さらなる販売数量低下に向かうリスクもある。増税分の高めな価格転嫁はどのような結果をもたらすのだろう。
現在、JTは世界第3位のたばこ製造会社で、売上および営業利益の半分を海外で稼いでいる。1999年に米RJRナビスコの米国外たばこ事業会社「RJRI」を9000億円超で買収(RJRIは世界シェア2位の「ウインストン」、同7位の「キャメル」という大型ブランドを持っていた)したことで、海外事業のノウハウを得た結果だとされる。そんな海外事業比率が高いJTが、昨年のマイルドセブンの「メビウス」へ名称変更を成功させ、そのメビウスで国内でも利益拡大を目指すということか。(編集担当:吉田恒)