総務省が先月18日に発表した「労働力調査」によると、2013年の非正規労働者の割合は全体の4割と過去最高の比率になった。非正規雇用がこれ以上増えれば、雇用は安定しなくなり、格差はますます拡がるのではないかという声も多い。
個人所得の改善や格差の是正の必要が求められるなかで、1月に厚生労働省の労働政策審議会の部会による労働者派遣法改正案が国会に提出された。いままで企業が同じ配置で派遣社員を使用できるのは3年が期限だったが、改正案ではその派遣社員を入れ替えれば、無期限に使用できることになる。
これは企業にとっては、朗報かもしれないが、直接雇用を望む派遣社員にとっては、正社員への道をますます狭める改正と受け取られても仕方がない。
派遣法の規制緩和は、雇用を流動化し、経済の停滞の一因ともなっていた日本型の終身雇用を崩し、労働者がより待遇の良い企業を求めて、自由に行き来することで、経済を活性化させるためと言われる。そうは言っても、非正規で3年を上限としていたのは、その期間以上の雇用は正規雇用に切り替えることを企業に促すものであったはず。
この改正に対して、経団連の米倉弘昌会長は「派遣社員にとっても(権利が)保障され、バランスが取れている」と評価。しかし、この改正案で「権利が保障される」ということはなく、経団連は改正案の内容を取り違えているように思える。事実、「NPO法人派遣労働ネットワーク」は「雇用安定と待遇改善への期待を裏切った」として建議撤回を求める声明を発表している。
派遣労働法の規制緩和は、雇用者所得全体の減少、消費と企業売り上げの低迷など悪循環を招くと不満の声もあがっているが、「企業を優遇すれば、業績が上がり、賃金に反映し、結果的に景気が良くなる」というアベノミクス成長戦略はまだまだ続きそうだ。(編集担当:久保田雄城)