先月25日、近畿日本鉄道(近鉄)<9041>は2015年4月1日をめどに持ち株会社へ移行するとの発表を行った。鉄道や不動産、そしてホテルや流通などそれぞれの事業部門を分割し、各事業を完全子会社化することで権限や責任を明確にし、速やかな経営判断が行えるようにする。それにより、グループの統合力の強化を図る。
持ち株会社や子会社の社名、またその人事などに関しては今後検討し決定される。15年4月をめどに会社を切り分け、各事業は近鉄の子会社となり、近鉄にはグループ戦略などを担当する部門だけが残される。6月の株主総会にて正式承認を求める予定。
近鉄は現在、近鉄本体により鉄道や不動産、また商業施設運営などの事業を直接経営している。このほかグループ会社にも近鉄不動産や近鉄百貨店<8244>といった、本体の経営する事業と重なる会社もある。これまで鉄道事業の出身者が不動産や流通などの事業に携わるケースが多かったが、これからはそれぞれの分野において専門的な知識やスキルなどが求められてくるとの判断から、15年4月以降は持ち株会社では経営方針の決定や分割したそれぞれの子会社の調整に役割を限定し、子会社の自立性を高める方向に体制を整える。持ち株会社は上場を維持し、近鉄百貨店など上場子会社への出資比率の変更は行わない。
また去年の10月、近鉄グループの運営する近鉄ホテルシステムズと近鉄旅館システムズが食材偽装問題を引き起こしているが、今回の持ち株会社移行との直接的な関連はないとのこと。そうした問題の発覚する前の9月頃から、今回の持ち株会社への移行は検討されていたようだ。しかしそうして問題を引き起こした近鉄ホテルシステムズや近鉄旅館システムズに関しては、今回の移行を行う中で、その管理体制さらに強化するとのこと。
3月7日、近鉄は「あべのハルカス」を全面開業させる。近鉄が今後さらに成長する上で極めて重要なこの事業を成功させるためにも、持ち株会社への移行後はこれまで以上にグループ全体の経営戦略に力を注ぐ。(編集担当:滝川幸平)