「福島は大丈夫」 京大が避難区域を除き放射線のがんリスクは低いと発表

2014年03月01日 12:37

 福島県では、避難区域を除き今の被ばく線量率ではがんリスクは低いと判明した。京都大学の小泉昭夫 医学研究科教授および石川裕彦 防災研究所教授らの研究グループは、環境省の環境研究総合推進費(5ZB-1202)などの助成により、福島第一原子力発電所周辺の避難区域に接する自治体住民の平均被ばく線量調査を実施し、その結果を同大学のHP上で発表した。

 同グループは、福島第一原子力発電所周辺の避難区域に接する自治体住民(福島県双葉郡川内村、相馬市玉野地区、南相馬市原町区)の平均被ばく線量を調査したところ、2012年で年間0.89mSvから2.51mSv放射性セシウムの物理的減衰を考慮して)であり、一般日本人の自然放射線による年間被ばく線量2mSvと近い水準だったという。

 また、福島第一原子力発電所から20kmから50kmに位置し避難区域に隣接する3地域の住民が土壌中の放射性セシウムにより受ける外部被ばく、食事と大気粉じん中の放射性セシウムから受ける内部被ばくを12年8月から9月にかけて2ヶ月間評価した。調査対象者には個人線量計を着用してもらい、また陰膳法による食事の提供を受けた。さらに大気粉じんを地域ごとに採取した。

 この結果、外部被ばくは年間1.03mSvから2.75mSv、食事からの内部被ばくは年間0.0058 mSvから0.019mSv、大気粉じんからの内部被ばくは年間0.001 mSv以下となった。この結果、個人被ばくの99.5%以上は外部被ばくの影響によるものであると判明したとしている。

 独立行政法人 放射線医学総合研究所では、放射能が年間線量100mSv以上だと人体に影響を及ぼし、がん死亡のリスクが徐々に増えることが明らかになっているとしている。また、厚生労働省では、食品に含まれる放射能の安全値は年間線量1mSv以下と定義している。今回の調査結果からすると、福島は全く問題はない。この調査は、外部被ばく・内部被ばくを測定し評価するだけでなく、今後数十年の長期にわたる被ばくの評価も行った。さらに発がん率も定量的に予測している。信頼性も抜群だ。避難区域はともかく、福島への偏見がなくなるよう期待したい。

 なお、この研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」の電子版(米国東部標準時 2014年2月24日)に掲載された。(編集担当:慶尾六郎)