【今週の展望】権利確定イベントと新規IPOで起死回生か

2014年03月23日 20:35

 「節分底、彼岸天井」は、まぼろしに終わった。節分の2月3日の日経平均終値は14619円、4日は14008円で、5日の最安値13995円が今のところ2014年の年初来安値だが、春分の日の前日の3月20日の安値は14207円、終値は14224円で、200円余りしか上がっていない。節分底で、彼岸も底に近い。

 消費増税前の駆け込み需要で景況が良く、3月期決算企業の4~12月期決算が好調で通期業績の上方修正が続出し、株価が3月までは上向きで推移するというシナリオは、国内要因だけならほぼその通りだった。しかしアルゼンチン、トルコなど新興国の危機、アメリカの大寒波、中国、そしてウクライナと打ち続く海外ネガティブ要因にかき消された。さらにこの上に、4~6月期のマイナス成長が予想されている国内景気の消費増税後の反動減が加わったら、日本株は奈落の底に突き落とされてしまうのではないか……。

 そんな危機感を持ったとしても不思議はない。20日に発表された3月9~15日の対内株式投資が1兆924億円という統計開始以来最大の売り越しで、海外機関投資家の「日本売り」は空前の規模だった。毎日毎日、日経平均は先物売買に翻弄されてもみくちゃにされている。危機感の先にあるのは、株価のパラダイムシフトが起こってアベノミクス相場が完全に終了し、テクニカル分析など全く無意味になるような異次元の低水準からの再起を余儀なくされる、というシナリオだ。

 だが今週は起死回生の望みがある。それは26~27日の権利確定イベントと4件ある新規IPOが刺激になって相場に活気がよみがえり、株価が乱高下せず安定をみせること。たとえば昨年3月の権利確定イベントの前の週はキプロス問題が起きて外部環境が非常に悪く、日経平均が18日340円安、19日247円高、21日167円高、22日297円安と先物主導で派手な上下動を繰り返した。しかし権利確定イベントの週は25日こそ207円高だったが、権利付き最終売買日の26日は74円安、権利配当落ち日の27日は権利配当落ち分を全部埋めて22円高、28日は157円安、29日は61円高と落ち着きをみせ底堅くなっていた。その週でも、北朝鮮が「無慈悲な鉄槌を下す」などと威嚇を続け、キプロス問題も尾を引いて外部環境は決して良くなかった。

 その間、権利付き最終日には翌日の権利配当落ち分を修正するために投資信託などが「再投資買い」を入れる動きがあり、また3月末が近づくにつれて機関投資家が、キプロスの騒動で売った分を期末のポジション整理で買い戻す動きもみられた。1年後の今週も直前の状況が似ているので同じことが期待できるだろう。少なくとも「決算対策売り」で株価が下がる心配は26日の権利付き最終日で終わる。さらに27日の権利配当落ち日は「実質新年度入り」というキリのいい日でもあり、国内機関投資家から年度替わりの新鮮な資金が入ってきて権利配当落ち分約80円を埋めてくれる期待も持てる。モーニングスターによると日本株対象の国内投資信託の新規設定が26日に2件、28日にも2件あるのも心強い。

 そして今週は新規IPOにテーマ性のあるものが粒ぞろい。26日のサイバーダインは上場承認時に介護ロボット関連というテーマに火をつけたので改めて紹介するまでもないが、同じ26日のディー・エル・イー(DLE)もアニメキャラクターのコンテンツビジネスなのでテーマ性は十分。25日のみんなのウェディングは結婚関連ビジネスなので女性の注目を集めて話題になりそうだ。28日のエスクロー・エージェント・ジャパンも、東京市場で何度も主役を張っている不動産関連である。新規IPOが刺激になり関連銘柄に買いが波及して市場が活性化する例は、今までもよくあった。前週は電気機器セクターの大型IPOが2件続けて初値が公開価格を下回ってつまずいたが、今週は期待できそうだ。

 20日の日経平均終値のテクニカルポジションを確認すると、日足一目均衡表の雲も基準線も転換線もずっと上空で、5日、25日、200日移動平均線も上にあり、14日時点とあまり変わらない位置。前週は14504円の200日移動平均線が上値を押し返す役割を果たしていたが、今週もそれは変わらないだろう。

 ということで、今週は大幅上昇は期待できないが大幅下落もなく、日経平均終値の変動レンジは14100~14500円とみる。27日に日経平均が約80円の権利配当落ち分を完全に埋めてプラスで終われるかどうかは、今後を占う上でけっこう重要なファクターになるかもしれない。(編集担当:寺尾淳)