集団的自衛権行使容認ケース 最後は国民投票で

2014年03月22日 11:38

「現行憲法下において集団的自衛権は有するが行使はできない」と歴代自民党政権下においても堅持してきた『憲法解釈』。この解釈に基づいた日本の安全保障体制と安全を確保する日本外交の姿勢が大きな局面を迎えようとしている。

 「日本を取り巻く安全保障環境は大きく変化した」。安倍晋三総理が強調する。防衛装備においても一国で開発する時代から数カ国で共同開発する時代に入った。防衛装備の開発を自国のみで行うには経費も時間も莫大なものになるため、国益からみても複数国での共同開発が現実的との考えがある。そのため武器輸出を禁じた三原則も新たな枠組みにしなければならない時代に入ったとする。

 安倍総理は「新しい時代にふさわしい憲法解釈のあり方」を提起する。新しい時代にふさわしい憲法解釈とは何なのか。時代によって憲法解釈が時の政府で都合よく変えられたのでは法の安定性は失われる。新しい時代だからこそ、憲法を再認識し、時代にそぐわないとすれば『解釈の変更』でなく、憲法改正を議論していくことが必要だ。集団的自衛権を憲法の解釈変更で押し切るとすれば、その正当性を裏付けるため、集団的自衛権を容認するケースのそれぞれについて、次期国政選挙の際に、この案件を別途、国民投票で審判することを求めたい。

 さきの総選挙、その後の参院選挙で「安倍総裁」、「安倍総理」が支持されたのは経済政策への取り組みであった。経済に閉塞感のあった中で、安倍総裁はデフレからの脱却、経済再生を最優先に総選挙を戦い、野田政権を倒した。3本の矢で経済に活力と国民に期待を持たせ、参院選でも安倍総理は圧勝した。中小零細企業や多くの労働者の所得がアベノミクス効果の恩恵を受けるのか、恩恵を受けずに暮らしが苦しくなるのかの結果が実証されるのはこれからの話になる。
 
 株価上昇と円安、そして様々な経済政策で大企業と株式投資家はすでに恩恵を受けている。経済に明るさが見えかけているので、多くの国民は安倍政権を支持してはいる。

 一方で、集団的自衛権の行使に関しては多くが支持しているとは云い難い。集団的自衛権の憲法解釈を変更し、集団的自衛権を行使できるようにすることには朝日新聞の世論調査で賛成29%、反対59%。

 議論は尽くさねばならないが集団的自衛権の行使容認は自民党の選挙公約であり、国政選挙で圧倒的な議席を得て勝利した自民は国民との約束を果たさねばならないと行使容認に積極的な姿勢がみてとれる産経新聞とFNNの世論調査でも、報道では行使容認は自民党支持層の61.5%にとどまり、公明党では42.2%と反対(44.4%)を下回っている。

 国政選挙で圧勝したことに違いないが、自民党の公約すべてを支持しているわけではないことが伺える。特に、先の総選挙と後の参院選挙はデフレ経済下での閉塞感と自公民の3党合意ではあったものの消費税増税、若年層の深刻な就職難など将来不安がくすぶっていたため、デフレ脱却・経済再生を全面に訴えた安倍総裁への期待感、参院では経済に明るさが見えてきた安倍政権への期待感が選挙に現れたとみるのが素直だろう。

 集団的自衛権の行使については安倍総理の急進をけん制する声が自民党内にもある。元行政改革担当大臣の村上誠一郎衆院議員は法律で歯止めを掛けるのは簡単でないとして「堂々と憲法改正すべき」と主張する。

 公明党の山口那津男代表も集団的自衛権の行使を解釈で変更する事実上の解釈改憲には一貫して慎重な姿勢をとっている。山口代表は行使を容認すれば、『歯止め』がどうなるのか、国際社会、特に近隣周辺諸国の理解を得るための時間と努力、一方で解釈変更による法的安定性への懸念もある。

 政府は安保法制懇の報告を受けて、与党内議論をすすめながら、夏までに憲法解釈変更の閣議決定を狙うが、解釈改憲を行うなら、個別具体のケースについて行使容認の閣議決定を行った場合に、国会議論を経た後、それぞれのケースについて、最後は国民に分かり易く情報提供し、国政選挙で行使容認については別途に直接問う国民投票を実施し、過半数の賛成を得て、取り組むべき重要案件と思われる。

 国民投票で過半数の賛成を得たうえで、容認とされたケースについて、実効を得るための自衛隊法改正など関連法案を国会に提出する。そのことが、憲法改正を経ないで行える唯一の正道だろう。

 『解釈変更で行使が容認されるなら国会なんて要らなくなる。国民の出番もなくなる』(阪田雅裕元内閣法制局長官)。憲法解釈の変更は国家・国民にとって重大事であることを安倍総理も自民も国民全体が再認識すべき。そして、こうした手順を踏んで自衛隊法改正が実現した場合も、実際に集団的自衛権を行使するには「国会の承認がなければできない」とする『歯止め』が担保されていなければならない。これらも踏まえ、後半国会の行方を注視しよう。(編集担当:森高龍二)