Moto GP 2013年総括と2014年への期待

2014年03月23日 20:08

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ロッシはシーズン序盤(第6戦まで)の出来によっては2014年でのMoto GPからの引退が在り得ることを示唆している。2014年はロッシの去就にも注目だ(昨年の初戦2位に輝いたバレンティーノ・ロッシ(左))

 2013年のMoto GPは何と言ってもマルク・マルケスの活躍を語らずにはいられない。

 シーズン序盤はホルヘ・ロレンソとダニ・ペドロサのベテラン争いになると見られていたが、ロレンソが第7戦アッセンでのプラクティスで転倒し、負傷。次戦のザクセンリンクでも転倒の大アクシデント。この怪我によって、ロレンソが長期の戦線離脱を余儀なくされてからマルケスの快進撃が始まった。

 シーズン序盤から、ロレンソ・ペドロサ・マルケスの三つ巴の状況だったが、ロレンソが戦線離脱をきっかけにマルケスが爆発。ペドロサの巻き返しが予測されたものの、転倒・リタイアなどペドロサの戦績はふるわず。ペドロサは第9戦のラグナ・セカの決勝では負傷のアクシデントもあり、中盤はマルケスの4連勝。これによってシーズンの流れは完全にマルケスに傾いた。

 ただ、ロレンソも強かった。ロレンソは怪我からの本格復帰を果たした12戦・シルバ・ストン以降の7戦中5戦で優勝。マルケス、ペドロサとデットヒートを演じ、マルケスを猛烈な勢いで追い上げたものの、チャンピオンにはわずかに届かなかった。

 2013年はマルク・マルケスという20歳の最年少王者誕生に沸いたMoto GP。中盤はマルケス一色に染まったシーズンだった。終盤のロレンソの追い上げによりチャンピオンシップ争いは苛烈になったが、結局はシーズンを通して安定した走りを見せたマルケスがチャンピオンシップを獲得する結果に。ロレンソやそのファンとしては「あの怪我がなければ」と悔やまれるシーズンとなった。

 また、2013年シーズンはかつて絶対王者と言われたヴァレンンティーノ・ロッシが終始4番手に甘んじる結果となった。現在、マルケス、ロレンソ、ペドロサと「4強」あるいは「四天王」と称されるロッシだが、2013年を見る限り、上位3名との差は大きい。ロレンソが怪我で欠場したアッセンでこそ勝利したものの、シーズンを通しての成績はぱっとしなかった印象が強い。

 2013年のMoto GPはスペイン勢の活躍が光る年となった。ちなみに、Moto2、Moto3のカテゴリでも、スペイン人ライダーが圧勝でチャンピオンシップを獲得しており、スペイン人ライダーの勢いは止まらない。

 では、2014年シーズンのMoto GPの展望はいかなものか。

 まず、現時点で調子がよいとされるのが、マルケスとロッシ。マルケスはサーキット(マレーシア・セパン)でのオフィシャルテストでサーキットレコードを塗り替えるタイムを出し、今年も活躍が期待される。一方、ベテラン・ロッシも復調の兆し。終始4番手に甘んじた2013年シーズンは苦い思いもあったようだが、今シーズンはチームとのマシン開発も順調。チーム全体の雰囲気も上昇ムードだ。

 ロレンソ、ペドロサも好調をキープしており、2014年シーズンもこの四天王がレースの中心となることは間違いない。また、ロッシはシーズン序盤(第6戦まで)の出来によっては2014年でのMoto GPからの引退が在り得ることを示唆している。2014年はロッシの去就にも注目だ。

 さらに、2014年はレギュレーションが大きく変わる。2013年シーズンまでは「GPマシン(ワークスマシン)VS CRTマシン」という構図だったMotoGPだが、2014年シーズンからは「オープンカテゴリーVSファクトリーオプション」という構図になる。

 2014年シーズンでは、全車に共通の公式ECU(エレクトリックコントロールユニット:マニエッティ・マレリ社製)の搭載が義務付けられるが、「オープンカテゴリー」の車両はこれに加えてソフトウェアも共通のものを使用する。

 一方、「ファクトリーオプション」は「公式ECU+独自のソフトウェア」を用いてレースに参戦する。

 このファクトリーオプションは独自のソフトウェアを使用できる代わりに、厳しい規制が課せられることになる。オープンカテゴリーが24Lの燃料と1選手当たり12基のエンジン(1シーズンで)使用できるのに対して、ファクトリーオプションでは燃料は20L、エンジンは5基までとなり、さらにファクトリーオプションでは、シーズン中のエンジンの開発も凍結されるため、第1戦で用いたエンジンの性能で1シーズンを戦い通さなくてはならず、チームメイトが同じ性能のエンジンでレースをしなければならない。

 オープンカテゴリーではシーズン中のエンジン開発が可能な上、チーム内でのエンジン性能の差異も認められていることを考えるとファクトリーオプションへの規制は厳しい。加えてタイヤもオープンカテゴリーの方が一段階柔らかいものを使用でき、ファクトリーオプションはテストの回数も制限されている。

 これは独自ソフトウェアの使用が圧倒的に有利であることから設けられているレギュレーションだが、シーズンが進むにつれ、ファクトリーオプションとオープンカテゴリーの差が縮まる可能性は高い。

 このレギュレーション変更を受けて「ドゥカティ」は大いに揺れた。ここ数年低迷中、マシンバランスと挙動に不安のあるドゥカティにとっては、シーズン中のエンジン開発は必須であり、ファクトリーオプションでの参戦は厳しいという状況だった。そのため、ぎりぎりまでオープンカテゴリーでの参戦を検討していたドゥカティだが、直前のグランプリ・コミッションにおいて、「2013年シーズン未勝利のファクトリーメーカーについては、エンジンは1選手につき12基まで(開発凍結なし)、燃料24L、オープン用のタイヤ、かつオリジナルのソフトウェアの使用を認める」こととなった(2016年まで有効)。

 これに該当するドゥカティは、ファクトリーオプションとオープンカテゴリーの中間という、特例とも言える位置での参戦となる(エントリーはあくまでもファクトリー。ただし、レースの状況によっては特例レギュレーションは再調整が行われる)。

 ドゥカティはソフトウェアはオリジナル、エンジン・燃料・タイヤについてはオープンカテゴリーと同等と、最も有利な条件とも言える。また、新しくチームに加わるカル・クラッチローにも期待が寄せられており、チームとして躍進する可能性は十分にある。

 2014年シーズンもいよいよ開幕。今年もまた3強スペイン人ライダー勢が圧倒的な活躍を見せるのか、それとも腹をくくったベテランのロッシが巻き返しを見せるのか、はたまた名門ドゥカティ復活となるか、期待は高まる一方だ。(編集担当:熊谷けい)