日本総研は、25日までに地方の有効求人倍率が急回復しているとの見方を発表した。厚生労働省、日本銀行、総務省などが発表した資料を元に分析したもの。
報告によれば、2010年以降、有効求人倍率は上昇傾向にあるとのこと。とくに、「都市部」と「地方」とでは「地方」の回復が顕著。2000年代の景気回復局面では、「地方」は「都市部」に対し、大きく出遅れていたものの、今回は「都市部」と同じペースで改善しているという。地域別にみると、北海道、東北、四国、九州が前回のピークとなった2007年を上回って回復しているとのこと。
業種別にみると、非製造業の回復が顕著だという。とりわけ卸・小売業、建設業が大きく改善しており、アベノミクスをきっかけとした個人消費の回復により卸・小売業が持ち直したほか、公共事業の拡大により建設業の景況感も大幅改善ためという。景気回復に伴う労働需要の拡大を受けて、「地方」の就業率も急ピッチで上昇している。
地方の求人倍率が急回 復している背景として、報告では以下の2点を指摘している。 第1が、「景気回復の全国的な広がり」。2007年までの好況時は、東海での求人倍率の大幅な上昇に みられるとおり、円安を受けた輸出の増加が背景であり、景気回復は製造業の基盤の強い地域に限定されていた。関東、東海、近畿といった大都市圏では景況感の改善が進んだものの、それ以外の地方までは波及していなかった。しかし今回は、大都市圏が前回ピーク時の2006年より低水準にとどまるなか、地方が大都市圏以上の水準まで大幅改善したという。
第2に人手不足。地方では、人口流出と少子高齢化を背景に人口が減少しているという。就職機会を求める人口移動に加えて、少子高齢化が進行したことで南関東以外の全地域で人口は減少している。 ただし、実質労働需要(就業者数+有効求人数)は、景気に連動しつつ減少基調にあったものの、2010年以降は下げ止まり。2013年には、労働需要が労働供給とほぼ同水準になっているという。
今後は、景気は内需主導で緩やかな回復局面が続くとみられ、「地方」の労働需要は増勢が続く見通しとのこと。ただし、求人と求職者のミスマッチが懸念材料としている。職業別の有効求人倍率をみると、建設業が急上昇するなど、職業ごとに大きな格差が存在している。地方経済がアベノミクス効果を最大限に生かし、安定した経済 成長を実現するには、人口流出抑制策やミスマッチの解消に取り組むことが課題だと述べられている。(編集担当:堺不二子)