世界的に絵画や壁画、文献等の文化遺産をデジタルデータで保存し、後世に継承しようという試みが進められている。今回も日本のデジタルデータ技術がバチカン市国の人類遺産の保存に一役買うことになった。
NTTデータ<9613>は24日、バチカン市国のバチカン図書館と、同館に所蔵されている2世紀から20世紀に書き残された約8万冊、約4000万ページの手書き文献のデジタル化および長期保存を目的とした事業における初期契約を、2014年3月20日に締結したと発表した。初期契約は、約3000冊の手書き文献を4年間でデジタル化し、その費用は約23億円。将来的には約8万冊全ての手書き文献をデジタル化する見込みだ。
バチカン図書館は、世界最古の図書館の一つであり、人類遺産とも言うべき歴史的図書の重要なコレクションを収容する図書館。1448年にローマ教皇ニコラウス5世が設立してから、世界中より数々の貴重文献を収集し、現在の蔵書数は110万を超えるという。その中には、マニュスクリプト(manuscript)と呼ばれる貴重な一点ものの手書き文献が約8万冊ある。これら手書き文献には、華麗な装飾が施された「装飾写本」と言われる美術的価値の高いものから、当時の歴史、法律、哲学、科学および神学について著された研究的価値の高い貴重な文献が大切に保管されている。
しかし、これら手書き文献の中には、厳重な保存管理下にありながらも、時間の経過とともに日々劣化が進んでいるものも多く、これらはいずれ解読不可能となることが危惧されている。今回、バチカン図書館はNTTデータのデジタルアーカイブ技術を評価し、これらの手書き文献について長期保存をし、後世への永続的な文化の継承を決定、初期契約の締結にいたった。
NTTデータは、日本の国立国会図書館におけるデジタルアーカイブシステムの構築や、デジタルアーカイブサービス「AMLAD(アムラッド)」の提供など、デジタルアーカイブ領域における実績・ノウハウを生かし、この事業に参画する。これにより、日々劣化の進む人類史上極めて貴重な多岐分野にわたる歴史的手書き文献を高精細なデジタルデータとして長期保存する。そして、広く公開することで、学術的・文化的な利用価値を高めると同時に、バチカン図書館はもとより人類の歴史的遺産の継承に貢献できるものと考えているとしている。(編集担当:慶尾六郎)