核サミットでのロシア外し「G7」を強行した米国とEUに大義はあったのか?

2014年04月05日 15:41

 先日、ロシアがクリミア自治共和国と特別市セバストポリを併合する手続きを完了したと宣言した。

 形としてはウクライナの国家内国家であったクリミア自治共和国が民主的な住民投票により独立を宣言し、直後にかねてからの民意であったロシア編入を成し遂げたという経緯になる。しかし、これは以前から影響の強かったロシアが軍事的に介入し、実質的なクーデターを主導して自国に編入させたものだと欧米各国が非難しているものでもある。

 実際に併合直後に行われたオランダ・ハーグでのG7(ロシアを除いた米英仏独伊加日が参加)では日本の安倍首相を含めた各国首脳が「ロシアの軍事介入によるクリミア共和国の併合は国際法違反である」として非難声明を採択している。具体的にロシア高官の資産凍結やビザ発給停止などの制裁措置も既に開始している状況なのだ。確かに軍事的に介入して特定の地域を独立させ、自国に編入したというプロセスは国際社会に受け入れられるものではない。

 クリミアはもともとロシア人の方がウクライナ人より多い地域ではあるが、これが認められてしまえば世界各国で同様の事態が起こりかねない。意図的な移民の大量流入が侵略行為に直結するというのは当然の懸念である。ただし、欧米各国がこれを血相を変えて非難している姿には若干違和感を覚える。

 現実的にはウクライナをEUに取り込もうとウクライナ人を扇動した欧米各国に対し、それを察知し素早い軍事介入でロシアが先手をとったという側面が大きいからだ。そもそもイラクやリビアやシリアを筆頭に、毎度のごとく正義を掲げて反自由主義国家に軍事介入し、民主化を口実に親米政権に挿げ替えてきたのは米国ではなかったか。自国編入という侵略こそなくても、クリミアがロシア帝国時代から170年余りもロシア人の領地であったことを考えれば、今回のロシア側の理屈のほうが心情的にはいくらか理解できようというものだ。

 EUも相変わらず一枚岩ではない。米国と組んでウクライナをEUに引き込もうと画策しながら、ロシアからの資源に頼っている国などは米ロそれぞれの顔色をうかがいながら日和見を決め込んでいるのが現実なのである。結局は領土と利権の奪い合いであり、どちらが正しいというような性質の問題ではないのかもしれない。

 ただ、自分たちの画策が失敗して出し抜かれた欧米各国が顔を真っ赤にして「国際法違反」と叫んでいる様子には少なくともイデオロギーとしての大義は感じられない。その意味では“制裁”を口にしながらウクライナ支援を前面に打ち出し、直接的な攻撃を最小限にとどめている安倍政権の立ち回りはそれなりに評価すべきではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)