野田佳彦前総理はロシアのプーチン大統領が自身が総理だったころ、唐突な協力を求め、これに応じられるかどうかで総理としての能力を試したことを紹介したうえで、「今度は国際社会を試している」とし、「わが国を含め国際社会は力を背景とする現状変更の試みは断じて許さないという毅然とした姿勢が必要」とクリミアのロシア編入対応に対し「実効性ある制裁措置を」一致結束して講ずるよう政府に求めている。
今回のロシアの対応について、野田前総理は「シリアやイランの問題でロシアの力を借りたい米国、ロシアとの経済的な結びつきを強めたい欧州、北方領土問題を進展させたい日本などの足元を見透かしているように思える」との認識を示しているとみている。
野田前総理はプーチン大統領の一面を覗かせた事例として、2012年9月8日の日露首脳会談でのことを取り上げ「小さなお願いがある。このAPECに若いロシア人が2千人、給料なしのボランティアで働いている。最も優秀な500人にプレゼントしたい。一つの船を借り切って遊覧する機会を与えたい。横浜まで行くことを考えている。そして、東京からは飛行機で帰国させる。ロシア側ですべて費用を負担する。横浜に入国そして東京から帰国するために必要なビザの発給について、ご協力を得たい」という内容だったと紹介した。
そのうえで、野田前総理は「内容としては素晴らしいアイデアです。でも、日程を聞いて驚きました。何と船は9月11日に出港する予定だと言うのです。通常の手続きでは到底間に合いません。無理難題もいいところです。しかし、私は『よくわかった。しっかり受け止めて対応したい』と答えました」。
野田前総理は「唐突な提案を通して、私の指導力や日本の熱意を試していると直感した。日本政府は不眠不休の突貫工事でビザ発給を完了させた」と回顧していた。(編集担当:森高龍二)