【日経平均】5日ぶり反発でも後場失速しわずか43銭高

2014年04月10日 20:25

 9日のNYダウは181ドルの大幅高。NASDAQも70ポイント上昇した。ムードを良くしたのは市場予測を上回ったアルコアの決算もあるが、やはり午後発表の3月のFOMCの議事要旨。16人ほぼ全員が現在の超低金利を2015年まで維持するのが妥当と言い、インフレ率の低迷やウクライナ情勢、中国経済の減速にも目くばせしていたことがわかった。「ハト派のお面をかぶったタカ派か」と誤解されたイエレン議長の「ひと言多かったトーク」がなければ市場好感度MAXなFOMCだったはず。10日朝方の為替レートはドル円102円近辺、ユーロ円141円台前半で若干円安に振れていた。

 シカゴCME先物清算値は14505円。外資系証券の売買注文動向は4営業日連続の売り越し。取引時間前に発表された2月の機械受注は8.8%減で市場予測を下回ったが、日経平均は184.85円高の14484.54円で始まった。午前9時5分には14513円まで上昇するが14500円台の時間は短く、14400円台の値動きが11時頃まで長く続く。トヨタ<7203>など下落する主力株が散見され、日経平均もTOPIXも上値を抑えられた。10時30分発表のオーストラリアの3月の雇用統計が改善して豪ドルが急騰しても反応しなかった。

 11時に経済指標の発表が2件。3月の東京都区部オフィス空室率は前月比0.31ポイント改善し6.70%。7%割れは不動産業界にとってはテナント料上昇が期待できる良いニュース。ところが〃伏魔殿〃の中国からもたらされた3月の貿易統計は「春の嵐」から立ち直りかけた東京市場に水をぶっかけた。ドルベースの輸出は6.6%減、輸入は11.3%減で、市場予測はどちらもプラスだったのでまさにネガティブサプライズ。プラスで始まっていた上海市場も香港市場も急落し、為替は円高に振れ日経平均は14400円を割り込んだ。11時16分には14376円まで下げ、前引は14398円。それでもまだプラスだった。

 後場はこの日の安値で再開し、為替の円高がおさまらないため先物主導で下落し午後0時53分に一時14300円を割り込んでマイナスまで転落。その後は15300円をはさんでプラスとマイナスを行ったり来たりする。東京で弱い地震を感じた直後の1時23分には14269円まで下げるデリケートさ。TOPIXもマイナスに沈んだ。1時51分には14234円まで下げたが、最後までプラスとマイナスの往復が続く。どちらに転んでもおかしくなかったが終値は0.43円高の14300.12で5日ぶり反発。たったの43銭差でアベノミクス相場初の5日続落は阻止された。やはり安倍首相は「もってる男」か。日中値幅は下落一方で279円。TOPIXは-0.95の1149.49で5日続落。JPX日経400はプラス。売買高は19億株、前日は5日ぶりに2兆円を超えた売買代金も1兆8321億円と逆戻りした。

 日経平均が3日間で764円も下落し200日移動平均線も大きく割り込むと、さすがに前場は自律反発したが、その3日間のローソク足は大きなマドを開けながらの陰線3本で、「酒田五法」には「三空叩き込みには買い向かえ」とある。一昨年11月にアベノミクス相場が始まって以来7回の4日続落があったが5日続落はなく、年初からの「木曜日の呪縛」も直近2回の連騰で解けていたなど、この日はテクニカル的にもアノマリー的にも大幅上昇でもおかしくなかった。ただしそれは「外部要因に妨害されなければ」という条件付きで、中国発のバッドニュースに太刀打ちできなかった。さらに、日銀短観や景気ウォッチャー調査の先行指数に示された先行き不安と、黒田日銀総裁の記者会見での「我々は間違っていない」と言いたげな堂々たる態度のギャップも国内外の機関投資家の首をかしげさせ、この日も東京市場に「春の嵐」の名残りの風が吹いて、なぶられてしまった。

 値上がり銘柄780よりも値下がり銘柄833のほうが多いが業種別騰落率は17対16で値上がり優勢。プラス上位は非鉄金属、卸売、繊維、電気機器、精密機器、化学工業など。マイナス下位は電気・ガス、保険、輸送用機器、石油・石炭、水産・農林、情報・通信などだった。

 日経平均採用225種は値上がり101銘柄、値下がり104銘柄。プラス寄与度1位はゴールドマンサックスがレーティングを引き上げて595円高のファナック<6954>で+23円、2位は129円高で値上がり率15位のオリンパス<7733>で+5円、3位はTDK<6762>で+4円。マイナス寄与度1位は大引け後に決算発表を控えていたファーストリテイリング<9983>で-21円、2位は82円安でNASDAQに逆行したソフトバンク<9984>で-9円、3位はKDDI<9433>で-8円。イオン<8267>の「格安スマホ」、NTTドコモ<9437>のスマホ新料金に続き、総務省がスマホ通信料の引き下げに動くという観測気球的な新聞記事まで出て追い込まれ気味。

 メガバンクはみずほ<8411>と三菱UFJ<8306>が値動きなしで三井住友FG<8316>は14円安。野村HD<8604>も大和証券G<8601>も1円安と証券もふるわない。トヨタは全世界約639万台という大量リコールの悪影響はどうしても避けられず、メリルリンチが目標株価を引き下げたこともあり129円安で6日続落した。ホンダ<7267>も15円安と不振だったが、日産<7201>は9円高、マツダ<7261>は5円高。ダイハツ<7262>は19円高で、ヤマハ発動機<7272>はメリルリンチがレーティングを引き上げて34円高で年初来高値を更新した。

 電気機器は日立<6501>は6円高、東芝<6502>は1円高だったが、シャープ<6753>は4円安、パナソニック<6752>は2円安。富士通<6702>はプロバイダーのニフティ<3828>を売却すると報じられ、否定したが10円高。ニフティは一時ストップ高の300円高で年初来高値を更新した。ソニー<6758>も「ソネット」を売却検討と伝えられたが16円安。「ビッグローブ(旧PC-VAN)」を手放したNEC<6701>は4円安だった。旧パソコン通信時代に始まり90年代にインターネットの時代を開いたそれらのブランドも、「100ドルスマホ」がアジアを席巻する勢いで日本でも「格安スマホ」が登場した今春、曲がり角を迎えている。

 ニッケル価格上昇を受け大平洋金属<5541>は31円高で値上がり率4位、住友金属鉱山<5713>は53円高で同17位。LIXILG<5938>は3月期の経常利益が730億円で過去最高更新の観測で14円高。エイチーム<3662>はストップ高の475円高だったが、コロプラ<3668>は4月22日の東証1部指定替えが決まっても50円安、DeNA<2432>は79円安で年初来安値を更新し値下がり率16位に入るなど、ゲーム関連銘柄は必ずしも好調ではなかった。

 今週は小売業の決算発表が続く。前日に発表したABCマート<2670>は今期の営業利益を4.9%増、純利益を7.6%増と見込み、最高益更新でも市場予測に届かず125円安で4日続落。ホームセンターのDCMHD<3050>は2月期の純利益が3%減だったが今期の増収増益を好感され21円高。近鉄百貨店<8244>は2月期の営業利益は11.7%減でも今期は「あべのハルカス」全館開業効果で9.7%の増収、営業利益2.4倍を見込み8円高。イタリアンレストランのサイゼリヤ<7581>は今8月期で最終減益になるという見通しが出て47円安だった。

 この日の主役は「自動車部品メーカー」。ベアリングの日本精工<6471>はゴールドマンサックスがレーティングを「強い買い」に引き上げ38円高。自動車用金型部品を製造するパンチ工業<6165>は53円高で値上がり率7位、曙ブレーキ工業<7238>は22円高で同12位、プレス大手のユニプレス<5949>は82円高で同14位に入った。他にもこのセクターは、技術的、財務的にみて隠れた優良銘柄が少なくない。(編集担当:寺尾淳)