トヨタ自動車は、ハイブリッド車(HV)の開発・投入で自社車両の燃費改善を進めてきた。が、HVは比較的大きなモデルの燃費改善には効果があるが、リッターカーよりも小さな排気量のクルマには向かない技術だと言われている。
その理由は、エンジンと燃料タンクに加えて、駆動用と発電用のモーター、そして電気を蓄えておく高性能なバッテリーを搭載すると、いかに軽量化に努力しても50kgほどの重量増は避けられないからだ。1トン程度のコンパクトカーの5%以上の重量増は即、燃費悪化に繋がる。しかも、ハイブリッド化による数十万円の価格アップは避けられない。新興国を含めたグローバルな市場で車両価格のアップは競争力を削ぐ。
そこで、コンパクトカーを中心に高効率小型エンジン開発が急務となっていた。独フォルクスワーゲンなどは、数年前からエンジンの「ダウンサイジング」コンセプトを掲げ、小排気量エンジンにターボなどの過給器を付けて運動性能を落とさずに小型車のポロやゴルフの燃費を改善。日産も昨年発表した小型車ノートのエンジンを4気筒から3気筒にダウンさせた上でターボ化した。
こうした情勢をうけて今回、トヨタが従来比で最大30%燃費を改善した新エンジンを発表した。HV専用エンジンの開発で蓄積してきた燃焼改良と損失低減技術により世界トップレベルの高熱効率を実現したガソリンエンジンだ。
この低燃費エンジンは、今月中にマイナーチェンジする同社の小型車「ヴィッツ」「パッソ」より搭載をスタートする。
トヨタが新たに開発・改良を進めている高熱効率・低燃費エンジンは、世界トップレベルのエンジン最大熱効率を達成することで燃費向上を実現するというもの。熱効率とはエンジンなどのエネルギー効率を数値化したもので、燃料を燃やすことで生じた熱エネルギーのうち有効な仕事に変換された割合。熱効率が高いほど燃料消費は少なくなる。
今月、マイナーチェンジするヴィッツに搭載する1.3リッターガソリンエンジンは、これまでハイブリッド専用エンジンに採用してきたアトキンソンサイクルを採用。同時に13.5の高圧縮比とすることで膨張比を上げ排熱を抑制した。また、シリンダー内に強いタンブル流(縦回転の混合気の流れ)を生成する新形状の吸気ポートにより燃焼効率を高め、さらにクールドEGR(排出ガス再循環システム)、電動連続可変バルブタイミング機構などを採用している。これにより燃焼改善と損失低減を追求した結果、量産ガソリンエンジンとしては世界トップレベルの最大熱効率38%を達成。アイドリングストップ機能などと組み合わせ、従来エンジンに比べ約15%の燃費向上を実現した。
また、ダイハツと共同開発した1リッターガソリンエンジンも、タンブル流を生成する新形状の吸気ポート、クールドEGR、高圧縮比化などにより最大熱効率37%を達成。アイドリングストップ機能などの燃費改善技術とあいまって、従来型比で最大約30%の燃費向上を実現。マイナーチェンジするパッソに搭載する。
トヨタは、これらの燃焼改良と損失低減技術を生かし、最大熱効率を大幅に向上させた低燃費エンジンをラインアップすることで、すべてのクルマの環境性能をこれまで以上に高めていく。今後2015年までに全世界で合計14機種のエンジンを順次導入するという。(編集担当:吉田恒)