韓国が患う「自殺」という社会病

2014年05月18日 10:07

 日本は自殺の多い国だが、実はお隣韓国の自殺率は日本よりも高い。有名芸能人や政治家が、自らの手でその命を断ったとのニュースが連日報道されている。つい先日もテレビのリアリティー番組に出演していた若い女性が、収録現場にて自殺。遺書には番組内容に対する不安や不満が綴られていた。放送局のSBSは直後に謝罪し、番組はすぐに打ち切られることとなった。
 
 また、前大統領のノムヒョン氏が自殺したとのニュースもまだ記憶に新しい。彼は側近や親族が贈賄容疑で逮捕され、自身の逮捕も近いのではないかとの噂が飛び交う中、自宅近くの岩場から投身自殺を図った。

 韓国の自殺率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、2012年まで9年連続でワーストであった。人口10万人に対する年間の自殺者数は28.4人で、これは一日に42人以上が自殺しているという計算になる。まさに異常な事態だ。韓国の自殺率は経済力の発展とともに上昇してきた。アジアの奇跡と呼ばれる成長の中で自殺率は1992年から2012年までの20年間でなんと3.5倍にまで増加している。
 
 社会学の専門家によれば、自殺率が上昇してきた背景にはこの経済成長の裏にある、新しい文化と古い文化の対立があるという。韓国の若者達は過剰な競争社会と、儒教に基づいた古くからの思想の間で板ばさみになっているという。進学や就職に失敗すると即、負け組みが確定してしまう社会構造にも大きな問題があるのは間違いない。また、高齢者層も社会の急激な変化についていけず、貧困層が急激に増加している。

 自殺率の高さについてはもちろん日本も他人事ではない。経済的な背景や国民性に若干の違いはあれど、生きることに望みを失った人々が社会に大量に溢れているという事実は同じである。画一的な価値観や過剰な競争、「勝てばいいのだ」という行き過ぎた利己主義。弱い者ほど叩かれるという誰もが目を背けたくなるような社会に我々は生きている。

 国全体としての経済成長はもちろん大切だが、国内で富の偏在が強くなり過ぎれば同時に多くの不幸も生み出されてしまう。精神的文化度の高い本当に成熟した国家となるためには、多様な価値観に対してもっと寛大な社会を目指さなければならないのだろう。(編集担当:久保田雄城)