日本経済の未来を占う上で最も大きな課題とされる少子高齢化問題。その解決のために政府の有識者委員会「選択する未来」が中間報告をまとめた。
委員会によると、50年後には日本の人口は現在の1億3000万人弱から8000万人台にまで落ち込んでしまう。これまで高齢者対策が中心であった政府予算を出産や育児支援へと大胆に移すべきで、具体的な数値目標として人口1億人を維持するよう促している。
甘利明経済財政・再生相もこの報告を「骨太の方針」に反映させたいと発言しており、政府が人口問題について明確な数値目標を持つのはこれが初めてのこととなる。日本の投資先としての魅力が低下し、経済が更に縮小する負の連鎖を断ち切ることと、高齢化によって社会保障費が増大することを抑える目的がある。
また、報告書では、出生率についても現在の1.4から2.0程度にまで引き上げるべきとしているが、専門家によると出生率の改善だけでは我が国の抱える問題の解決に至らないという。
例えば自治体の維持可能性もその一つで、人口移動により都市部への集約化が進めば過疎地域では行政サービスが維持できず、自治体が消滅してしまう。ある試算によると現在ある自治体のうち約4分の1は維持が不可能とされている上、現実の状況はもっと厳しいとの声も多い。人口移動を進めるべきか、留めるべきか。その方針も早晩はっきりさせなければならないだろう。
人口が減れば当然その分経済規模も縮小してしまう。特に人口減とセットで高齢化の進む日本の歪な人口ピラミッドは、不安な日本経済の先行きを表す象徴とも言えるだろう。
人口問題は一朝一夕で解決できる問題ではない。それこそ数十年単位で取り組むべき課題である。移民によって労働力をキープしようとする考えもあるが、世界的に見ても移民政策には悪い点も目立つ。最近、欧州各国の選挙で移民政策反対を掲げる右翼政党が支持を伸ばしているのもその表れだ。
第一次ベビーブームによって団塊世代が誕生し、その団塊世代によって第二次ベビーブームが起きた。しかしそこで生まれた団塊ジュニア世代の多くが適齢期であった2000年前後に少子化対策をしっかりと行えなかったのは、日本の政治史上でも特に大きな失政と言えるだろう。我々は今、その失敗の代償を払わされようとしているのだ。しかし嘆いてばかりいても時間は戻らない。希望溢れる未来のために、今こそ知恵を出し合う時だ。(編集担当:久保田雄城)