信用取引の需給も改善している。東証がまとめた信用取引現在高(概算/二市場)によると、信用取引の「信用買い残÷信用売り残」の数値を示す「信用倍率」は、5月9日時点は5.49倍から5月16日時点の5.78倍にかけて悪化したが、その後は5月23日時点で5.18倍、5月30日時点で4.56倍と低下をみせている。春先から「昨年11~12月の上昇期の制度信用買いの決済期限が迫ると株価が下落する」と言われ続けたが、どうやらそれもヤマを越したと言えそうだ。
そうした需給の改善は、株価指数について言えば「下落しにくく、下落してもすぐに回復する」という体質の改善につながる。それは、3日以降の日経平均がおおむね15000円以上の水準をキープし、大台を割り込んでも短時間で回復したのと符合している。
そのように「風」に恵まれた今週、孤高の鳥、日経平均はどこを目指して飛ぶのか? メドとして挙げられるのが今年これまでの戻りザラ場高値である。直近では4月3日の「15164円」がある。6日には15144円まで上昇しており、ボリンジャーバンドの「25日移動平均線+2σ(第2標準偏差)」の15174円よりも下なので、今週中に終値でもクリアできる可能性はあるだろう。しかし3月7日の「15312円」や1月29日の「15383円」となるとハードルが高い。しかも今週は、日銀の金融政策決定会合の結果発表と「メジャーSQ」が週末の「13日の金曜日」に重なるという少々特殊な事情がある。
日銀の追加金融緩和は、日がたつにつれて可能性がどんどん遠のいている。2日には外資系証券3社が「7月に日銀が追加金融緩和に踏み切る」予想を取り下げた。6日に発表された「ESPフォーキャスト調査」(日本経済研究センター)のエコノミストの予測も、5月調査では「7月」が38名中17名を占めていたのが、6月調査では36人中7名に激減し、代わりに14名が「10月」と回答している。13日の日銀会合の結果も「現状維持」が濃厚だが、それでも今週は後半になるにつれて様子見ムードが出て、上値をなかなか追えない展開になるだろう。
日銀会合の結果が13日の正午頃に出るその数時間前、取引開始早々に「メジャーSQ」のSQ値(特別清算指数)が算出される。今回予想されるのが「15000円をめぐる攻防」で、「荒れるSQ週の水曜日」の11日を中心に、日経平均先物も現物も15000円を軸に50~100円程度の幅でメジャーSQへの思惑がらみの激しい上げ下げが出るかもしれない。ましてや日銀会合前の様子見で売買が薄くなっていたら、その影響は大きくなる。清算規模が大きいメジャーSQなので混乱がSQ算出日当日まで持ち越される可能性もあり、「13日の金曜日」には、くれぐれもご用心。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは14900~15200円とみる。日経平均にブレーキがかかっても、前週のパフォーマンスが良かった「JPX日経400」の採用銘柄は引き続き期待できるだろう。なぜなら、この指数にはまだ先物市場もオプション市場もないからだ。(編集担当:寺尾淳)