総理が日本の安全保障にとって一番のリスクなのか?

2014年06月12日 06:34

 党首討論が11日、行われ、集団的自衛権をめぐる問題で、民主党の海江田万里代表は「日米がイコールパートナーシップになって自由に靖国に行かせてもらいたいと(思っているのか)、歴史をひっくり返そうとしているのか。総理の考え方、総理が総理でいることこそが日本の安全保障にとって一番リスクだ」と集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で行えるようにしようとする総理を厳しく批判した。

 海江田代表は民主党の集団的自衛権に関する見解を示した。海江田代表は「集団的自衛権の行使については、これまで長年にわたる憲法解釈があるから、この解釈を正面から否定して集団的自衛権の行使一般を容認する変更は許されない」との立場を明確にした。

 そのうえで「東アジアの安全保障環境は10年前、20年前と大きく状況が変わってきている。日本の国土、領海、領空を守るためにしっかりとした態勢を整えなければならないということは言うまでもない。そのためにグレーゾーンやマイナー自衛権などと言われている、わが国の防衛の法整備の裂け目があってはいけない。これに対してはしっかりとした対応をやっていく」と述べた。

 海江田代表は政府が出している15事例は国会にまだ示されていないとしたうえで、「独自に15事例について入手し、党で精査しているところだ」とした。

 海江田代表はそのうえで「この問題は国家の安全保障政策の基本を根底から大きく覆すものだ」とし「国会を通して、しっかりと国民に説明すべきだ。5月の総理の記者会見から1か月経っていない中で、6月20日に閣議決定するというには、まさに拙速だ」と総理・自民が結論を急ぐ姿勢を強くけん制した。

 また、海江田代表は「国民との議論もない、国民を代表する国会での議論もない」と安倍総理の進め方を批判。さらに、「集団的自衛権を行使したいとするなら、憲法改正をすべきではないか。閣議で憲法の解釈を変更すればよいと考えるのはなぜか」と根拠を質した。

 安倍晋三総理は「アジア、太平洋の安全保障上の状況は厳しさを増している。南シナ海においては(中国の)力によって現状変更する試みが続いているのは事実。そして、日本の上空においても、自衛隊機に(中国軍機が)異常に接近する事態が起きている。また、近隣国(北朝鮮)は日本をミサイルの射程に入れ、核開発を行っている。こうした中で、切れ目のない防衛を行っていく。かつ、同盟国との関係を強化することで、抑止力を効かしていく必要がある」と延々、状況を語ったものの、憲法の解釈を変更すればよいとの根拠についての問いに答えたとはいえないものになった。

 安倍総理は「閣議決定しても自衛隊が直ちに行動できるわけではない。行動できるようにするためには法の改正が必要だ。法改正において国会で審議いただくことになる」と答えた。

 しかし、法改正は過半数で成立するうえ、歯止めがどこに担保されるのかまったく担保はないに等しい。憲法改正という重大な手続きを経ずに解釈改憲で高いハードルを回避し、法改正で審議して頂くという論理には危険性が高すぎる。類似の懸念は法案ではないが、原子力規制委員会委員の国会同意人事案件で立証された。

 原発再稼働推進派の人物を原子力規制委員会委員に野党の反対を押し切って、数の力で衆議院通過させた。あわせて、民主党時代に原子力規制委員会委員に就任するにふさわしくない人物を排除し、政府、電力業界から独立した機能を担保するために作成されたガイドラインを安倍政権は適用しない。数の暴走を担保する歯止めがなければ、国家の安全保障政策は危険きわまりない状況にあることを浮き彫りにしている。解釈改憲でなく、憲法改正の手続きで国民の賛意を問うことが、憲法の法的安定性を保ち、国民の意思を反映させる唯一の道といえよう。

 海江田代表は討論後に「言いたいことは言ったが、安倍総理のはぐらかし方がますますひどくなる。安倍総理が日本の総理として、特に安全保障の問題の責任者であるということは危険だ」と改めて、危険視した。(編集担当:森高龍二)