安保法制整備に関する13日の与党(自・公)協議で、座長の高村正彦自民党副総裁が憲法9条の下で認められるとする武力行使の3要件の案を示した。公明は党内で検討する。
案では(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または、他国に対する武力攻撃が発生し、これにより、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがあること。(2)これを排除し、国民の権利を守るために他に適当な手段がないこと。(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。この3つの要件に該当する場合に限られると解する、としている。
しかし、他国に対する武力攻撃により、日本の国民の生命や自由が根底から覆される恐れが生じ、かつ、国民の権利を守るために武力行使以外に手段がないというケースとはどういうケースなのか。日本の国民の生命や自由が根底から覆される恐れがあると判断するのは時の政府だろうから、「イラクが大量破壊兵器を保有。国民の権利が根底から覆される恐れがあるとして参戦になりかねない。派兵は無限定に広がる」(共産党の志位和夫委員長)と懸念する声もある。
さらに必要最小限度の実力行使とはどの程度を持って必要最小限度とし、その判断を誰がするのか。戦時下で逐次、国会の承認を得、対応を決めることができるのか。戦争に巻き込まれれば政府が国会に事後報告を繰り返すばかりで、政府先行で独善的に走る危険性はないのか。米国とともに武力行使する事態を招けば歯止めが担保されていると思えない情緒的な担保表記(必要最小限度の実力行使にとどまるべき)になっている。
日本が武力攻撃されていないのに、他国への武力攻撃によって、我が国の存立が脅かされるケースとはどのようなケースか。誰もが理解しやすい事例をあげ説明することが求められる。
この表記は「集団的自衛権の行使」を認めるものだが、都合よく、従来の武力行使(個別的自衛権の行使)の3要件に、「他国に対する武力攻撃によって、我が国の存立が脅かされる」旨の文言を追加することで、現行憲法下で集団的自衛権行使が容認されるとの解釈変更を図るもので、時間をかけて議論すべき問題だろう。閣議決定を急ぐべきではない。(編集担当:森高龍二)