研究論文を読むために年間1億円も支払うという現状

2014年06月15日 15:22

 インターネット上でどこでも読むことのできる電子学術誌「電子ジャーナル」の価格高騰が止まらず、大学が悲鳴をあげていると新聞各社が報じている。その上昇ぶりは異常なくらいで、中には1冊あたり200万円という目を見張るほどの値段のものもあるようだ。文部科学省の調べによると、一大学当たりの電子ジャーナルの経費は、2004年には1,000万円以下だったのに対し、12年には3,000万円に達する勢いで、まさしくうなぎ上りの状態だ。さらに、国立大学一校当たりの平均購入額は09年度以降1億円を越え続けているという。

 こうした電子ジャーナルの価格高騰の動きは、国内外でも数年前から問題視されてきた。12年にはアメリカのハーバード大学が、電子ジャーナルにかかる費用の窮状を具体的に訴えている。同大学の教員で構成する図書館に関する諮問委員会(Faculty Advisory Council)が発表した内容によると、ハーバード大学は大手出版社に対して年間375万ドルを支払っており、中には年間4万ドルものの購読費がかかっている電子ジャーナルがあるという。また過去6年で45%も購読費が値上がりしている出版社が2社あることを示し、学生や教員に向けて、「節約」することを求めた。

 書籍や出版物の電子化が進むに伴い、学術研究雑誌も電子化への道を歩んでいる。紙媒体で読むことのできる雑誌と電子版を並行して発行している雑誌社もあるが、完全電子化に移行した出版社もあるようだ。電子ジャーナルは、使い勝手も良く、学生にとっても利用しやすい。日本の大学においても、02年度から文部科学省が予算を組み、電子ジャーナルの導入は積極的に進められてきた。電子ジャーナルの価格高騰の理由には、代用品のない論文という商品の特殊性や、円安の影響で価格負担が増えることなどが挙げられている。また、研究者数の増加によって研究の競争が激化、そのために提出される論文の数も増え、必然的に、審査や編集にかかる費用もかさんでしまうという構図が生まれているらしい。そして、電子化による新たなシステム開発の費用が、電子ジャーナルの価格に上乗せされていることも一因にあるようだ。様々な要因が複雑に絡んでいるため、解決策については未だ明確な答えが出されていない状況だ。(編集担当:久保田雄城)