デフレの象徴ユニクロ 値上げ戦略の勝算は

2014年06月22日 20:41

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ユニクロは8月以降に売り出す商品の本体価格を上げると発表した。上げ幅は5%前後になる見通し。ユニクロが新商品への切り替えに合わせて一斉に値上げするのは初めてだ

 ファーストリテイリング<9983>が運営するユニクロは8月以降に売り出す商品の本体価格を上げると発表した。上げ幅は5%前後になる見通し。ユニクロが新商品への切り替えに合わせて一斉に値上げするのは初めてだ。最大の狙いは国内事業の収益確保にある。ここ数年は伸び悩んでいた収益の要である国内事業をてこ入れし、海外での事業拡大などの成長に向けた基盤を固める戦略だ。

 今回の値上げ発表には伏線があった。同社は4月に2014年8月期通期の業績予想を修正した。連結純利益は前期比3%減の880億円と従来予想(2%増の920億円)から一転して減益見通しとなる。海外ユニクロ事業の売上高は59%増の4000億円と従来予想を500億円上回る。一方、既存店の伸び悩みで、国内ユニクロ事業の売上高は5%増の7150億円と従来予想を50億円下回る見込みだ。海外事業の好調と比較し、人件費や物流費の増加で国内ユニクロ事業の採算が低下していることが明白になった。

 14年8月期末のユニクロの店舗数は、国内が857店と1年前に比べ4店増を計画。海外は632店(前期末は446店)と大幅な増加を予定している。柳井正会長兼社長は記者会見で「近い将来、海外ユニクロの売り上げが国内ユニクロの数倍になる」と4月10日の会見で語った。さらに、価格戦略についてもこのように語っている。「同じ品質を維持して値段を下げるのは不可能だと思う。我々は付加価値や機能、素材などでより良い商品をあらゆる人に提供する企業。値上げしようとは思っていないが、評価してもらうのはプライスではなく付加価値、お値打ちだ」

 4月の段階では柳井会長兼社長は値下げは不可能だと明言したものの、値上げしようとは思っていないと語っている。では、どこでその方針が変わったのだろう。国内ユニクロの既存店売上高は、4月が3.3%増、5月が4.1%増と消費増税後もプラスが続いている。下期の既存店売上高計画は0.5%増だったが、3-5月では2.8%増と、計画を上回って推移している。こうした好調な販売状況が、値上げの後押しになったのではないだろうか。

 同社は消費増税後も好調な販売と、国内事業の収益確保とを天秤にかけ値上げに踏み切ったのだろう。デフレの象徴であったユニクロの値上げは脱デフレに向けた経済の潮目の変化となるかもしれない。消費者はユニクロの値上げ戦略をどう受け止めるだろうか。(編集担当:久保田雄城)