ユニクロを運営するファースト・リテイリング<9983>は2001年より障がい者雇用に本格的に取り組み、当初の目標であった1 店舗 1 名を達成。13年度には国内で161 名を採用し、雇用率は6%を超えるなど「先進的」とされ、CSR活動として高い評価を得ている。因に民間企業では、法定雇用率が2%、国、地方公共団体では、 2.3%となっている。
しかし、「週刊文春」14年5月1日号にて「ユニクロ「障がい者」社員いじめ・パワハラを告発する!」と題したリポートが取り上げられた。ここでは、障がい者にとって優しい環境でない実態が暴露された。企業は障がい者を雇用する際、厚生労働省から各種助成金を受けることができるため、ユニクロは5億円以上の助成金を受け取っていると推定される一方、障がい者へのいじめなどが複数店舗であると報告されている。
一方、ユニクロのCSR報告書にはこう書いてある「障がいの内容や能力に応じて、やりがいのある仕事を見つけて、努力できる環境があります」と。これまで雇用を推進した素晴らしい取り組みを否定することはできないし、労働環境は様々な要因や利害が交錯するため、真実はどうなのかはわからないが、社会的に先進的な取組みを実施するのは難しいことだけは事実のようだ。
そうした中、岡山県総社市では、市長のイニシアティブのもと、「障がい者千人雇用」を推進し、3年で、721人が就労という成果を出した。「総社市障がい者千人雇用委員会」を11年5月に発足させ、障がいがある人の雇用の場の創設や就労の安定化に向けた施策に官民で取り組んだ結果だ。企業で雇用をしてみると「職場の団結力が上がる」事例が増え、その取り組みが徐々に広がっているようだ。
この委員会、特に、基本理念や障がい者雇用が進まない原因分析を部会で考察するなどの取り組みは斬新である。基本理念部会の中間報告では、「障がいがあることが原因・理由となって出てくるさまざまな不利益あるいは不都合を,本人あるいは家族の責任だとして社会的になんの手も差し伸べないことは,「人間尊重」の観点からみるとあってはならないことといえます」と記載されているが、心にずしっとくる言葉だ。
自治体では、法定雇用率は2,372機関中1,947機関が達成しているが、総社市のように積極的に取り組みをできているのか。まずは地域のみんなで考えること。それが障がい者・健常者双方が共生できる政策作りの出発点であろう。(編集担当:久保田雄城)