2012年の国内アパレル総小売市場は9兆1645億円で、前年比101.3%のプラスとなったことが矢野経済研究所の調査で分かった。市場規模が前年比プラスとなるのは2年連続。(『国内アパレル市場に関する調査結果2013』)
主な要因は、価格よりも品質で選ぶ消費者が増えたことにある。特にアパレル市場のうち6割を占める女性向け市場が好調で、前年比101.1%増の5兆7500億円だった。長く低迷が続いていた百貨店ブランドにも、底打ち感が見られる。婦人服のミセス向けや、キャリア女性向けブランドの人気が持ち直し、中価格~高価格帯の商品が売れるようになってきた。事実、2012年の全国百貨店売上高は、前年比0.3%増。16年ぶりに前年実績を上回った。商品別では「衣料品」が0.6%増えている。男性向けファッションや子ども服市場も、前年度比プラスとなった。
ここ数年はファストファッションの台頭で、「流行のものを安く買ってワンシーズン着回す」スタイルが一般的になっていた。ところが矢野経済研究所によれば、2011年頃から消費者心理が変化。価格よりも、機能や品質の高さに価値を見出す傾向がはっきりしてきた。特にミセス向けでは、体型変化に対応したカッティングや着心地のよさを追求した、高価格の商品が好調だという。一方で、ファストファッションの代表格であるファーストリテイリングの国内ユニクロ事業は、3期連続の減益となった。
全体としては回復基調にあるアパレル市場。だが、2007年には10兆円を超していたことを考えると、まだまだ以前の勢いはない。リーマン・ショック以降、消費者心理の冷え込みは大きく、アパレル市場は一時、8兆円台まで落ち込んだ。この6年で市場は1兆円以上も縮小している。
少子化や高齢化の影響で、今後もアパレル業界に大きな成長は見込めないだろう。矢野経済研究所では、2015年の国内アパレル市場は9兆970億円と、2012年比で99.3%のほぼ横ばいを予測している。(編集担当:北条かや)