経団連のまとめた2013年「夏季・冬季賞与・一時金調査結果」によると、夏季・冬季の賞与が全産業において前年を上回った。東日本大震災の影響やタイの洪水被害などによるダメージからの回復基調が鮮明となり、いよいよ社員の所得にも反映され始めたようだ。調査結果によると、非管理職は夏季710,244円(対前年増減率プラス0.7%)、冬季722,683円(同プラス2.4%)、管理職は夏季1,370,619円(同プラス0.5%)、冬季1,357,754円(同プラス3.2%)とのことだ。特に土木建築業、金融・保険業での伸び率が高い。また、効果査定の幅は拡大する方向にあり、能力や結果が賞与に反映される仕組みを各社とも整えているようだ。
賃金上昇機運の高まりは他の調査でも明らかになっている。先日経産省が発表した「企業の賃上げ動向に関するフォローアップ調査」(中間集計)では、「常用労働者の賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業は92.2%で、前年の88.6%を大きく上回った。この「引き上げた・引き上げる」と回答した企業のうち、その方法を「ベースアップ」とした企業も46.7%にのぼる。ベースアップの金額については、1,000円以上が約80%となっており、前年の約47%を上回った。ボーナスアップではなく、ベースアップを行う背景には、今後ある程度長い期間での好景気を見通すことができ、人件費を増やしてでも優秀な人材を確保したいという各企業の思惑見え隠れしている。
ただし、これらの調査は大企業の多い東証一部上場企業が中心となっている。地方の中小企業の間では賃金アップなどとても考えられないという雰囲気もまだまだ強い。事実、商工中金がまとめている「中小企業月次景況観測」によれば、5月の景況判断指数は46.6。2ヶ月ぶりの上昇となるも好不況の境目となる50は未だ割り込んだままだ。消費増税の影響など不安要素も少なくない。賃金上昇の波が日本の一部にしか訪れないのであれば、それは本当の意味での景気回復とは言えない。今後この勢いが日本の隅々にまで波及していくのか、注視していく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)