熟成肉が人気で開発に取り組む企業も

2014年06月29日 13:07

 今、日本の食肉業界では、熟成肉が人気を伸ばしている。熟成肉とは、牛肉を30日前後寝かせて熟成させることによって、肉質を軟らかくし、うまみを増加させたものをいう。もともとの起源は、欧州などで狩りで手に入れた肉を洞窟や地下倉庫に吊るして保存していた手法にあるらしい。

 今年四月に、吉野家<9861>が熟成肉を使用することを発表した。これまでは米国産の冷凍肉をそのまま加工していたが、低温に設定した冷蔵庫で14日ほど熟成させてから加工する方法に切り替えたようだ。また、ファミリーレストランのロイヤルホストやカウボーイ家族でも熟成肉を取り扱っている。

 熟成肉には、赤身が多く、固い肉質のものが向いているとされている。主な製法はドライエイジングと呼ばれるもので、室温は0~4度、湿度は80%ほどに保ち、常時肉に風を当てながら水分を飛ばして、表面を乾燥させて作る。その環境の中で肉の中にある酵素が働きを高め、肉の繊維質をほぐし、たんぱく質を分解してアミノ酸に変化させることにより、うまみを得ることができるという仕組みらしい。しかし、この作り方では、表面に発生したカビを削り取る必要が生じ、結果、食べられる部位は50%ほどしか残らないという。時間もかかる上、温度管理などの環境整備の費用もかかるため、効率よく利益をあげるには難しいという面もある。

 鳥取県は2013年から、地元企業であるエムケイ開発と共同で熟成肉の開発を手掛け、今年5月にようやく製品化にこぎつけたばかりだ。6月から全国に向けて通信販売も始めている。エムケイ開発の熟成肉の特徴は、氷温技術で知られる氷温研究所の力を借りて、室温調整を肉が凍るぎりぎりの0度からマイナス1.5度にまで下げた「氷温乾燥」という製法にある。従来のドライエイジングが肉の熟成に30日前後かかるのに比べて、たった4日ほどに大幅短縮、カビなどによる肉の切り捨てが必要となる部位も、20%ほどに抑えることができたという。熟成肉の製造コストを抑え、製品化効率をあげていくことができれば、さらに熟成肉の市場は熱くなっていくかもしれない。(編集担当:久保田雄城)