消えた日本国債の謎 水面下の熱い金融攻防戦

2014年06月27日 12:19

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財務省がまとめた国別の国際収支統計によると、中国が持つ日本国債の額は2013年末でおよそ14兆3000億円だった

 財務省がまとめた国別の国際収支統計によると、中国が持つ日本国債の額は2013年末でおよそ14兆3000億円だった。12年末に比べ、6兆2000億円の減少だ。ところが、どうにも計算が合わない。中国は13年には市場で中長期の日本国債を約2兆4000億円売り越すと同時に短期の日本国債を約2兆円買い越した。両者をひっくるめれば、中国が13年に売り越した日本国債の額は4000億円となるはずである。奇妙なのは売越額がこれだけなのに、残高は一気に6兆円超も減ったことだ。市場の外で何らかの操作をしたとしか思えない。同様のことが米国債についても起こっている。中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の初代主席を務めた劉明康氏による、今年4月のワシントン市内での講演のことだ。劉氏は、中国は1兆9750億ドル相当を米国債で運用していることを明らかにした。この内容と米国側の統計との間で7000億ドルものズレが生じていたのだ。円換算で実に70兆円以上もの額だ。

 今年3月、クリミアの住民投票を控え、米欧とロシアとの間の緊張が一段と高まっていた時、FRB傘下のニューヨーク連邦準備銀行から1045億ドルの米国債が消えた。ロシアの13年末の米国債保有残高は1386億ドル。ロシアの報道官が3月初めに「保有米国債を売却して報復するかも」と威嚇していた経緯もあり、ロシアが米国債を引き出したとの見方が有力だ。これほどまでに大量の国債を隠すことが可能なのか。スイフトと呼ばれる国際銀行間通信協会のネットワークを使えば巨額の国債の預け替えは簡単にできる。実はルクセンブルクの13年末の日本国債保有額は前年より5割近く多い12兆円。またたく間に英国や米国を抜き、中国に次ぐ2位に躍り出た。「ルクセンブルクにある日本国債のかなりの部分は、本当の持ち主が中国なのではないか」。そんなうわさが絶えない。米国債においては、ベルギーが保有残高を倍増させており、何とも奇妙な動きをしている。

 故・橋本龍太郎元首相が米国債売却の誘惑にかられたことがあると述べたことで、金融市場は大混乱した。翌日の米株価は1987年のブラックマンデーに次ぐ大幅な下げを記録した。大量の国債保有が大きな武器となりうることを図らずも実証することとなった。今や戦争は軍隊を動かして行うだけではない。水面下、金融市場でひっそりと熱い攻防戦は繰り広げられている。(編集担当:久保田雄城)