安倍内閣の「強い日本」。「世界で最も企業が活動しやすい国づくり」。その中身をみる。「企業収益拡大で雇用創出・所得向上を図る」御旗のもとでの『大企業優遇政策』。「いかなる事情よりも、安全性を全てに優先させる」と再稼働を懸念する国民にも寄り添うようにみせかけながら、安全基準をクリアしているかどうかを判断する原子力規制委員会の委員を原発再稼働派に挿げ替える『原発政策』。委員選任に民主党政権下でつくられたガイドラインは適用しないと平然と委員を挿げ替える姿勢に「いかなる事情よりも、安全性を全てに優先させる」姿勢があるとは思えない。
そして、安全保障環境の変化を理由に、米国とともに戦える国へ。7月1日は憲法解釈を変更し「集団的自衛権行使容認を正当化」させる入口を設けることになりそうだ。「集団的自衛権での与党協議座長試案は「『おそれ』を『明白な危険』と書き換え、限定を偽装。集団安保―多国籍軍参加への道をこっそり開く仕掛けを盛り込む」(共産党・志位和夫委員長)と指摘の声も。
与党協議に公明党内でも「今回の憲法解釈は昭和47年解釈の基本的理念を維持し、適用を変えるということだが、解釈を変えると言わざるを得ない。従来の公明党の主張と相いれないのでないか」など慎重な意見が根強い。
北側一雄党副代表(憲法調査会長)も6月26日段階では「議論は熟されつつあるが、熟していない。集約できる状況とは思っていない」と語っている。7月1日までのわずか5日で憲法に直接かかわる大問題を集約にまで党内議論は尽くされるのか。
憲法9条(戦争の放棄)を変えたい自民党・安倍内閣のもと、総理外遊前に閣議決定したいという日程だけのために、軽軽に取りまとめることは避けて頂きたい。公明党員を説得するのではなく、議論の場として、結論を急がないことが大切なことだろう。歴代政府の憲法解釈と整合性があり、法的安定性が保てるのか、解釈の変更が日本のとるべき道を誤らせないか、よくよく熟考をお願いしたい。
安倍政権の路線では懸念する動きが成長戦略でも多い。『軍需産業支援』への動きもそのひとつだが、資本主義経済が内在する問題を修正し歩んできた戦後日本の『修正資本主義』路線を完全に覆させる『弱肉強食、自由主義経済の徹底』路線への転換。『戦える国への歩み』路線が色濃くなりつつある。
国民ひとり一人が安倍内閣・自民の政策のそれぞれを関連付け、注視すれば「強い日本」と「世界で最も企業が活動しやすい国づくり」の中身が見えてくるだろう。戦後政府の中で、今ほど政府を注視することが民主主義国家において求められている時はない。安倍総理の世界で最も企業が活動しやすい国づくりは文字通り、「安倍内閣の成長戦略にタブーも、聖域もない。あるのは、どこまでもやり抜く強い意志です」と自ら豪語する内容だ。
労働法制という労働者にとって、ある種、セーフティネットでもある法制をも破壊する危険をはらむ。
それを総理は「岩盤を砕く」と表現する。『労働法制』は企業家や投資家がまさに利益をあげるうえで有利な状況へ変貌を遂げるかもしれない。一定の高額(?)所得のある社員には残業代なしで働いてもらえるよう、労働時間規制を適用しない雇用契約を創設する。その一定額は年収1000万円以上の労働者から、どんどん基準が下げられていく危険性がある。譲って年収6000万円以上の給与を得る社員ならまだしも、月給100万円に満たない社員から労働時間の制限を外し、過労死と隣り合わせになりかねない中で残業代までなくすとなれば、これは、経営側でない者にとって大問題といわねばならない。
反面、法人に対する復興税前倒し廃止に続き、法人実効税率を来年度から数年間で20%台にまで下げることをめざすと骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2014)に盛り込み、閣議決定した。財源は先送りし、下げることだけさきに決定。財源確保のため外形標準課税の対象を中小企業にまで広げ「浅く広く」する案が検討されている。消費税の論理と全く同じ、建前だけ「公平」にみえるが「得するのは大企業でしょ」と言わざるを得ない。