コンビニは消費増税後の反動減をものともせず、だったのか?

2014年07月07日 08:08

 コンビニエンスストア業界の「3強」、セブンイレブン・ジャパン(セブン&アイHD<3382>傘下)、ローソン<2651>、ファミリーマート<8028>の2015年2月期の第1四半期(3~5月期)決算が出揃った。5月末現在の国内店舗数はセブン16622、ローソン11867、ファミマ10703だった。

 セブンイレブン・ジャパンの営業収益は1780億円(前年同期比10.6%増)、営業利益は552億円(12.1%増)。ローソンの営業総収入は1171億円(2.0%減)、営業利益は168億円(17.6%増)、四半期純利益は90億円(26.5%増)。ファミリーマートの営業総収入は886億円(7.7%増)、営業利益は90億円(11.3%減)、四半期純利益は140億円(153.2%増)だった。なお、3社とも通期業績見通し、年間配当予想は据え置いた。

 数字の上では、セブンは増収増益、ローソンは減収増益、ファミマは増収ながら営業減益で3社3様だが、減収や減益にはそれぞれ特別な理由があり、消費増税後の個人消費の反動減で明暗が生じたと解釈するのは早計。ローソンの減収は、店舗の売上をそのまま営業総収入に計上できる直営店舗から、FC(フランチャイズ)手数料だけを営業総収入に計上できるFC店舗への転換を進めたためで、全店売上高は1.5%の増収だった。ファミマの営業減益は今年度1600店舗を計画する新規出店や既存店の設備投資のコストを吸収しきれなかったためで、四半期純利益は韓国事業の撤退に伴う現地企業の株式売却益を特別利益に計上して2.5倍になった。

 3強に次ぐクラスのサークルKサンクス(ユニーGHD<8270>傘下)は営業利益15.2%減と苦戦し、ミニストップ<9946>は営業損益が2.3億円の赤字に転落してしまった。国内店舗数もサークルKが6266、ミニストップが2197。サークルKの今年度の新規出店計画は400にとどまり、ミニストップは海外店舗数が国内店舗数を上回るとはいえ、3強との差は開く一方である。

 6月27日に経済産業省が発表した5月分の「商業販売統計速報」によると、小売業販売額は全体では0.4%減で、百貨店やスーパー、自動車販売店などが軒並み前年同月比マイナスになった中で、コンビニエンスストアは6.4%増、既存店ベースでも1.3%の増加で「ひとり勝ちの業態」になっていた。しかし、消費増税後の個人消費の反動減をものともせずに拡大したパイから得られる利益は3強でほぼ独り占めし、それ以下の企業との業績の二極分化の傾向はより強まっている。

■セブンイレブンとローソンは余裕ある戦いをなおも継続

 セブンとローソンの3~5月期の営業利益はともに過去最高を更新した。セブンの既存店売上高は3.6%増加し、消費増税後の反動減の影響をカバーした。ローソンの既存店売上高も0.7%のプラスだった。両社とも大きく貢献したのは春になっても好調が続く入れたてコーヒー「セブンカフェ」「マチカフェ」と、独自のPB戦略。PB商品のほうは利益率が高く営業利益の2ケタ増に寄与した。

 セブンはPBの「セブンプレミアム」が好調を維持。4月の消費増税に合わせて弁当、総菜約600品目を全面リニューアルした。一部商品は実質値下げになり、「セブンカフェ」は最低販売価格を100円に据え置いた。そんな商品政策が功を奏し、他2社がマイナスだった既存店客数が2.2%のプラスで、既存店客単価も1.4%増加した。平均日販も他2社より10万円以上高い水準。消費増税後の反動減対策は、まさに作戦勝ちだった。今年度の出店計画は過去最多の1600店舗である。

 ローソンで好調だったのは「総菜」で、取り扱い店舗を増やして独身者や仕事を持つ主婦など、料理に手間暇をかけられない消費者の「中食」需要を食品スーパーなどから奪っている。メンチカツの「げんこつメンチ」のようなヒット商品も生まれた。店内調理の総菜は利益率が高く、増益にも寄与している。今年度は1100店舗を新規出店する。

■ファミリーマートは業績で「2強」に離される懸念あり

 ファミマの4四半期ぶりの営業減益については「7.7%の増収なのでそれほど心配はない」という見方もあるが、新店効果にかなり依存している面があり、新店以外の既存店の日商(平均日販)が0.6%低下したのが気になるところ。全店ベースの客数、客単価も減少し、消費増税後の反動減による影響は他の2社よりもやや目立っていた。

 出店戦略については、前年度にセブンに合わせて1500店舗を計画して業界関係者や市場関係者を驚かせ、念願の国内1万店突破を果たしたが、今年度も1600店舗を出店するセブンにピタリと数を合わせてきた。中山勇社長は来年度までの3年間は「勝負の時」だとして積極出店を続ける方針。新規出店は地代家賃や店舗改装費だけでなくチラシなどの販促費もかかるので、前年度から「そんなに出店して、企業体力がもつのか?」と心配されていたが、そのツケがとうとう3~5月期の営業減益で噴き出した、と言えるかもしれない。消費増税時の既存店の商品の入れ替えでもコストがかさんでいた。

 ファミマはドリンクやアイスクリーム、氷菓などが売れる夏場で挽回するのは可能だと説明するが、通期で既存店の日商2.0%増、営業利益6.2%増という会社計画を達成するにはこの夏、まさに正念場を迎えている。結果によっては業績面で他の2社に離されて、「店の数は多いが儲かっていないコンビニ」という評価が定着してしまい、将来のコンビニ業界上位5社の業績は「2強1普通2弱」に三極分化してしまうかもしれない。