心の病での労災申請が過去最多 企業メンタルヘルスサポートの充実を

2014年07月07日 12:31

 過労やいじめなどを理由とした精神疾患から労災を申請した人の数は、厚生労働省の調べで2013年度は1409人に上り過去最多となった。その内認定者数は436人で、こちらは過去2番目の多さとなった。時間外労働の長期化など職場環境の悪化もあるが、パワハラやセクハラによる精神障害が労災の対象になるということが以前より広く浸透したことも関係しているだろう。

 こうした問題は一部の「ブラック企業」と呼ばれる組織だけの話ではない。日本社会全体の病理として、どの企業も今一度我が事として見直すべき問題だろう。過酷な労働環境の改善や、パワハラ・セクハラの撲滅はもちろんだが、社内でのメンタルヘルスサポート体制を整えることは、今後日本の企業が率先して取り組むべき重要な課題だろう。

 例えば、社内カウンセラーの配置、復職後のキャリアに関するモデルケースの提示、休職を繰り返す場合のケアなど、企業メンタルヘルスに関しては必要なサポート体制は山ほどあるが、多くの会社がそういった問題に手を付けられていないのが現状ではないだろうか。精神疾患による休職や労災申請などが出た場合、どういった形で対応し、その社員を守るのかということが、会社の中で共通意識として浸透している企業は残念ながら少ない。ほとんどが直属の上司の判断や、内々での処理に終わっているのではないだろうか。その状態のままでは、病状回復や復職も難しくなるのは当然だ。

 もちろん中には、曖昧な状態で診断書を出してもらい、労災を申請するなどの問題もある。企業側としても対応に困るケースもあるだろう。しかし、精神疾患による労災申請1400人の背後には、申請に至る前に離職したケースや、精神的苦痛を抱えたまま働く予備軍の存在もある。職場のメンタルヘルスの問題がそれだけ深刻化していることを省み、サポート体制を一刻も早く整えるべきではないだろうか。

 労災認定を受けた436人の内、自殺者・自殺未遂者の数は63人。おそらく数字に表れていない部分もあるだろう。仕事で心を病んで自ら命を絶つ、経とうとする人が少なくとも1年に63人もいる国。お金や物を持っていても、強い経済を取り戻したとしても、そんな国のままでは悲しく恥ずかしい。(編集担当:久保田雄城)