環境報告書に「リカちゃんファミリー」が登場

2014年07月12日 14:27

 環境に対する取組みは、今や社会の常識だ。とくに東日本大震災以降はエネルギー問題などへの関心も高まり、企業や団体も環境問題への配慮を抜きにした経済活動は考えられなくなった。とはいえ、ひと口に環境問題といっても、省エネや創エネなどのエネルギーに関することから、CO2の削減等地球温暖化の抑制、資源の保全や有効利用、化学物質リスクの低減などに至るまで多岐に渡る。ないがしろにできるものは一つもないが、どれに重点を置くかは当然、その企業や団体によっても異なる。

 企業や団体が、県境問題に対してどのような取組みを行っているかを知る方法として、「環境報告書」の閲覧がある。「環境報告書」とは、企業や団体等の事業者が、環境保全に関する方針や目標、計画、環境マネジメントに関する状況、環境負荷の低減に向けた取組みの状況などについて取りまとめたものだ。これを作成、公表することによって、環境コミュニケーションが促進され、活動内容が更に向上することが期待されている。また、事業者としては社会的説明責任を果たすことはもちろん、社会的信用を得られるメリットもある。さらには、消費や投融資を行う者にとっても有用な情報となりえる。

 独立行政法人や、国立大学法人などにおいて発行が法律で義務付けられているほか、2007年に環境省によって「環境報告ガイドライン」されて以降、大手企業を中心に環境報告書を発行する企業が増えている。

 また、環境コミュニケーションの促進と、質の向上を図る目的で、優秀な環境報告書等や環境活動レポート、テレビ環境CMを表彰する「環境コミュニケーション大賞」も設けられている。こちらは1997年度から実施されており、2014年3月に発表された17回目の環境報告大賞(環境大臣賞)には、株式会社滋賀銀行の「CSRレポート2013 歩みを、共に。」が選出された。また、持続可能性報告大賞(環境大臣賞)には、清水建設株式会社の「2013 シミズCSR報告書 第19号」、地球温暖化対策報告大賞(環境大臣賞)には、キリンホールディングス株式会社の「キリングループ環境報告書2013」が選ばれているほか、優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)は、NKSJホールディングス株式会社、味の素株式会社、積水ハウス株式会社など7点の環境報告書が受賞した。

 しかしながら、実際問題として一般的に環境報告書の認知度が高いかと問われれば、首を傾げざるを得ない。環境報告書は一般に開示されているので、企業のホームページなどでダウンロードしたりして自由に閲覧できるが、何か目的があるか、よほど環境問題に興味を持つ人でない限り、開くことはないのではないだろうか。内容的には難解ではないが、会社案内のようなものが多く、興味をそそられるものは少ない。

 そんな中、パナホーム株式会社が6月に発行したパナホームグループ「環境報告書2014」が、これまでのイメージを打ち破る斬新なものになっていて、非常に面白い。同社は現在、創業50周年の記念事業として、株式会社タカラトミーとのコラボレーションによるスマートハウスのプロモーションを行っているが、今回の環境報告書でもその一環として「リカちゃんファミリー」が登場しているのだ。

 中を覗いてみると、リカちゃんファミリーがスマートタウンにあるスマートハウスにお引越しする設定の上で、リカちゃん一家がスマートハウスに決めた理由など、同社の環境への取組みを分かりやすく解説している。これならば、ちょっとした雑誌感覚で楽しく読めるので、若い世代の人たちにも抵抗なく受け入れられるのではないだろうか。

 環境問題に対する取組みは常識になりつつあるが、それだけに形骸化してしまう危険性もはらんでいる。活動していればそれでいい、環境報告書を発行していればそれでいいという意識になってしまっては本末転倒だ。パナホームの環境報告書のように楽しく、受け入れ易いものが増えてくれば、環境報告書の認知もさらに高まり、報告書を公表する意味も深まるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)