日本経済新聞によると、先進国の低金利が長期化するなかで少しでも高い利回りを求めて世界の投資マネーが再び新興国へ向かっているというのだ。2008年のリーマンショックから世界経済が回復に向かうにつれ、新興国通貨は対米ドルでも、対日本円でも、上昇基調をたどってきた。その動きに変調が生じたのは13年5月、市場参加者が米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和縮小を強く意識し始めたときだ。金融緩和により米国から世界中に供給されている投資マネーが逆流し始めるのではないかという懸念から、新興国通貨が売られる展開となった。しかし、再び新興国へと投資マネーが流れ込んでいる。
新興国へのマネー回帰は本物か。リーマンショック後の新興国ブームと現在では明らかに環境は異なっている。「先進国経済の低迷」「資源高」「高金利」という3つの要因が新興国ブームをもたらした。しかし、現在、先進国経済は回復基調にあり株価は回復している。一方、13年7月にはオーストラリアの首相が「天然資源ブームは終わった」と宣言した。辛うじて相対的な金利の高さは現在も変わりないが、インフレ抑制と景気下支えとの間で新興国の金融政策は薄氷を履むが如しだ。
新興国を対象とした多くのファンドを運用している大和住銀投信投資顧問は新興国に二極化の動きが見られ始め、徐々にその動きが鮮明になっていると分析している。
主要新興国の為替の騰落率と各国のファンダメンタルズをインフレ率、経常収支、政治・社会の安定性という3つの観点から見ると、一定の傾向があるというのだ。インフレ率の高い国の通貨、経常赤字が相対的に大きい国の通貨、政情が不安定な国の通貨は下落幅が大きく、下落後の回復も鈍い。それらの要因が重なり合う国の通貨はさらに厳しい下落に見舞われている。下落の大きい通貨の代表がアルゼンチンペソ、トルコリラ、ブラジルレアルだという。逆にこれらの要因が薄い韓国ウォンやメキシコペソは新興国通貨のなかではしっかりとした推移となっている。
新興国への投資は、高い成長力への期待や、相対的に高い金利から大きなリターンが期待できることは確かだ。しかし、新興国のなかでも選別が始まっている。新興国ということだけで買える時代は既に終わった。今後はそれぞれのリスクを冷静に分析していく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)