トヨタ<7203>は6月25日、水素で走り、水しか出さない究極のエコカー燃料電池車(FCV)を2014年度中に世界に先駆け日本で市販すると発表した。トヨタは1997年、世界で初めてハイブリッドカー(HV)を国内で量産・発売。その後、米国など海外にも販売先を伸ばし、エコカー市場で高い存在感を築いた。新興国でも環境規制が厳しくなるなか、各社が次世代のエコカーとして開発にしのぎを削るFCVでも発売で先行し、主導権を握ろうとしている。そんなFCVをマーケットはどのように評価したのだろう。
発表の翌日、26日の日経平均株は前日比0.3%高で取引を終えた。東証1部の売買代金は1兆7340億円とその週は4日連続の2兆円割れ。市場は積極的な材料に乏しい。ニュースの震源地であるトヨタは前日比0.82%と小幅上昇にとどまった。とはいえ、デイトレーダーと呼ばれる個人投資家の買い意欲は健在だ。この日資金が向かったのは、岩谷産業<8088>や三菱化工機<6331>などだった。「水素ステーション」を手掛ける岩谷産業が15%高となり、売買代金でも5位につける活況。水素製造装置を手掛ける三菱化工機は34%高となった。両銘柄とも一時ストップ高をつけた。
こうした銘柄が大商いを演じる背景にはデイトレーダーの存在が大きい。彼らは取引が始まってから、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やネットの掲示板で盛り上がりぶりを確認、「きょうの『お祭り会場』はここ」と感じた投資家たちが特定の銘柄に集中して売買しているのだ。
水素で走り、水しか出さない「究極のエコカー」という将来性はあるが、業績がただちについていくかは不透明で株価はまだ期待先行の段階だ。燃料電池車の予定価格は1台700万円程度と高価な上、水素インフラが整うにも時間がかかる。すぐに普及が進むものではないとの見方も多い。デイトレーダーはそんなことは先刻承知。彼らが見ているものは将来性でも、財務内容でも、業績でもない。今後も日替わりでの循環物色を続け、市場のあちこちで局所的なデイトレーダーによる「祭り」が繰り広げられることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)