「豪ドル急落」の可能性を示唆する豪中央銀行の本音

2014年07月12日 18:52

画像「豪ドル急落」の可能性を示唆する豪中央銀行の本音

日本の投資家には特に人気が高いオーストラリア。スティーブンス総裁は過去に何度も豪ドル高を牽制する発言を行っているが、今回の発言もオオカミ少年なのか。それとも今度こそ身構える必要があるのか。

 主要先進国では金融緩和を背景に歴史的な低金利が続いている。ドルやユーロのボラティリティが低下し、主要通貨の相場が動きにくい状況が続いている一方、豪ドルやニュージーランド(NZ)ドルといった高金利通貨のキャリー相場が人気化し、こうした通貨は高値圏で推移している。とりわけ日本の投資家に人気があるのが豪ドルだ。

 オーストラリア準備銀行(中央銀行)のスティーブンス総裁は3日、「大半の尺度では、豪ドルの過大評価が数セント程度にとどまらないことが示されている」と指摘し、「われわれの考えでは、豪ドルがある時点で大幅に下落する可能性を投資家は過小評価している」と警告した。同中銀は1日、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を11カ月連続で2.5%に据え置いたことを受けて、豪ドルは、約8カ月ぶりの高値を付けていたが、この発言を受け豪ドルはこの日0.6%下落した。この0.6%という数字、正直なところ意外に下落幅は少なかったと言える。

 実はスティーブンス総裁は過去に何度も豪ドル高を牽制する発言を行っている。3月26日には「交易条件の悪化が見込まれており、交易条件の悪化に伴って豪ドルが下落しなければ驚きだ」と発言している。また3月7日には「為替レートは依然として歴史的な基準より高い」と発言している。13年にも幾度となく豪ドル高を牽制する発言を行っているのだ。にもかかわらず、実際には豪ドル相場は堅調な推移を続けている。

 なぜスティーブンス総裁はこれほどまで執拗に豪ドル高を牽制するのか。オーストラリアの2014年1-3月期のGDP成長率は、従来、低調だった資源輸出が増加したことや個人消費が好調だったことで、前年比3.5%増と約2年ぶりの高い伸びとなった。足下のオーストラリア経済は順調に推移しているといえる。ただし、景気の先行きについては、資源分野での設備投資の頭打ちや、社会保障削減を含む緊縮的な政府予算案などを背景とした消費者マインドの低下などが、懸念材料となり厳しい見方が多い。

 オーストラリアの中央銀行総裁による豪ドル急落の可能性をほのめかす発言は、今回も「オオカミ少年」で終わってしまうのだろうか。それとも、南半球のはるか彼方の地で、日本の投資家が気づかない何かが起こっているのだろうか。(編集担当:久保田雄城)