「LINE」東証へ上場申請、悲願の世界一への第一歩

2014年07月19日 12:31

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今までアジア発で世界一になったネットサービスはない。LINEが世界一になるにはワッツアップのお膝元である北米市場でシェアを奪う必要がある。上場により、その軍資金を得ることができるが、当面は先行投資の期間が続くとともに、株主の視線にもさらされる。

 無料対話アプリの、韓国のIT企業ネイバーの日本法人であるLINEが東京証券取引所に上場を申請した。早ければ11月にも上場する見通しだ。時価総額は1兆円を超えるとみられ、同時期の上場が予定される情報・人材サービス大手のリクルートホールディングスと並ぶ規模となる。上場の狙いは海外展開とアプリ開発だ。米交流サイト(SNS)最大手のフェイスブックが約190億ドルで買収を発表し話題になったワッツアップが待ち受ける北米市場への進出を図り、悲願の「インターネットサービス世界一」へ向け勝負に出る。

 LINEは「ハンゲームジャパン」の名称で2000年に発足した。転機となったのは、11年に提供を始めたスマートフォン(スマホ)向けアプリの「LINE」だ。利用者間の無料通話や感情表現用イラスト「スタンプ」機能が人気となり、13年に現社名に変更した。利用者数の増加は止まらない。13年7月に2億人を突破。その後、4カ月ごとに1億人ずつ増えており、今月内にも5億人に手が届く。

 国内では向かうところ敵なしのLINEだが、海外では事情が異なる。米ワッツアップのほか、中国テンセントや韓国カカオトークとの競争は激化するばかり。どこの国に進出しても、そこには既存のサービスがあるのだ。対話アプリは一度広がると知り合いを通じて加速度的に普及するが、初期の段階では大量のテレビCMなど巨額の販促費が必要だ。上場による資金調達はその最大の武器となる。

 ウェブサービス、特にモバイル向けの収益化は難しい。手っ取り早いのが、ソーシャルゲームのアイテム課金。最初はSNS(交流サイト)を標榜しながら、結局、ゲームサイトに落ち着くパターンが多い。しかし、同社の上級執行役員である舛田淳氏は、かつてこう語った。「僕たちは社会のインフラになりたい。それを世界に展開していきたい。そして、インフラの責任を果たすことをビジョンとしている。責任を果たしながら、ちゃんと収益モデルを作ることが社会貢献。」

 アジアから世界市場を掌握したウェブサービスはかつて存在しない。そのほとんどは米シリコンバレー発だ。成功の鍵を握るのは「単なるゲームコミュニティー」ではなく「社会のインフラ」として認められること。LINEの挑戦はシリコンバレーへの挑戦でもある。(編集担当:久保田雄城)