今月13日、滋賀県知事選が投開票され、前民主党衆議院議員の三日月大造氏が元経済産業官僚の小鑓隆史氏、共産党常任委員の坪田五久男氏を破り、初当選した。勝因は滋賀県知事選挙では国政の問題である「原発」を象徴的な争点として取り上げたからである。
今月13日、滋賀県知事選が投開票され、前民主党衆議院議員の三日月大造氏が元経済産業官僚の小鑓隆史氏、共産党常任委員の坪田五久男氏を破り、初当選した。嘉田由紀子知事の後継指名を受け支援を受けた三日月氏と自民・公明の推薦を受けた小鑓氏の事実上の一騎打ちであった今回の選挙は、25万3千票あまりを獲得した三日月氏が、約24万票を得た小鑓氏と約1万票差をつけ逃げ切る結果となった。
激しい戦いを制した三日月氏を支援した嘉田氏といえば、2012年の衆議院議員選挙に「日本未来の党」を結党し「卒原発」を掲げたことで有名になったいわゆる「改革派知事」だ。今回の選挙でも三日月氏は嘉田氏の政策を継承することを明言し、卒原発を公約に掲げて選挙戦を戦った。
滋賀県知事選がこれほどまでに注目を集めたのは、地域の課題に留まらず国政問題が大きな争点となったからだ。内閣参事官として安倍首相の経済政策「アベノミクス」にかかわってきた小鑓氏は滋賀の経済を再生させると訴え地元経済に照準を合わせようとしたが、三日月氏の訴える卒原発や坪田氏が訴える消費増税や集団的自衛権の行使容認反対の訴えに引きずられ、これらの課題も取り上げざるを得なくなってしまった。まだ良いイメージを保っているアベノミクスの柱である成長戦略を担当した経歴を引っさげ立候補し、一時は「楽勝」とまで言われた小鑓氏にとっては、原発や集団的自衛権といった課題が大きく取り上げられた選挙終盤の状況は誤算だったといえるだろう。
今回の選挙のように国政問題を地方選挙の争点にすることに賛否両論あることは事実である。しかし、大勢の中の一人となってしまう国会議員と比べて、全国に47人しかいない一国一城の主である知事は大きな影響力を持っているからこそ、国政課題に対する意見をはっきりと述べるべきだろう。その上で、国政問題と地元の課題のどちらに重点を置いた候補者を選ぶかは、その選挙区の住民が選択することだ。
滋賀県知事選挙では国政の問題である「原発」を象徴的な争点として取り上げた三日月氏が勝利した。三日月氏に喜んでいる暇はない。これからどれだけ国に主張を行い、公約を実現できるか、滋賀県民のみならず全国民が注目していると思い、仕事をしてもらいたいと切に願う。(編集担当:久保田雄城)