2012年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は女性が86.41歳、男性が79.94歳。女性は世界1位、男性は世界5位で、男女合わせると日本は世界一の長寿国だ。ところが、厚生労働省の調査によると、歯の平均寿命は約50~65年。命の寿命と比べると約20年以上も短い。健康な歯を少しでも長く保ちたいというのは誰しもが願うこと。その為には日々のデンタルケアが重要だ。
とくに最近注目されているのが、プラークコントロール。プラークといわれると何だかスタイリッシュなイメージもなきにしもあらずだが、要は歯垢のことである。しかも、歯垢の正体は料理の食べかすなどの生易しいものではなく、細菌の塊。スタイリッシュとは程遠い存在なのだ。歯の表面に白く付着したヌルヌルとしたアレがすべて細菌だと思うと、ゾッとしない人はいないだろう。しかもこのプラーク、気持ち悪いだけじゃない。細菌から発生する酸や毒素が、虫歯や歯周病の主な原因となる。さらには唾液の中のカルシウムと結合して石灰化し、歯石となって蓄積するからタチが悪い。歯石になると容易に取り除けない上に、そこがさらに細菌の温床となって歯周病や虫歯に拍車がかかってしまうのだ。
歯石は、自分ではなかなか取り除くことができないからこそ、予防が何より大切になる。たとえば、CMでプラークコントロールの認知度を高めたライオンの「PCクリニカ」シリーズなどの歯垢除去と歯石予防に特化した歯磨き粉の利用や、ブラウンの電動歯ブラシ「オーラルB」シリーズなどを使用して、日々のハミガキで歯垢を除去する方法が一般的だが、近頃はジョンソン・エンド・ジョンソンが発売している薬用マウスウォッシュ「リステリン」などの利用者も増えている。しかし、これらは、薬用とはいえ、あくまで薬品であり、安全性はしっかりと確認されて発売されているのは間違いないが、それでも抵抗がある人も少なくないだろう。大人はともかく、子供には刺激も強く、なかなか使いにくい。
そんな人には、はちみつがおすすめだ。「歯石にはちみつ?」と首を傾げる人も多いと思うが、実はハチミツには歯石を予防する効果があることが実験によって確認されている。実験を行ったのは、ミツバチ産品の販売で知られる山田養蜂場と、福岡医療短期大学 歯科衛生学科の日高三郎教授。両者の共同研究として、世界各国から集めたはちみつの歯石予防作用について確認する実験が行われ、はちみつに歯石の蓄積を予防する(抗石灰化作用)可能性があることが明らかになった。はちみつの抗ウィルス・抗菌作用が歯周病や口腔潰瘍などの予防に役立つことは知られていたが、口腔内の石灰化、歯石歯予防効果があることが証明されたのはこの実験が初めてで、研究成果は歯周病研究の学術誌「Journal of Periodontal Research」にも掲載され、科学的にも認められている。
山田養蜂場によると、この実験で、甘露、ローズマリー、ペーターソンカース、ユーカリ、ラズベリー、ベニバナ、ペパーミント、コーヒー、レンゲ、百花の10種類のハチミツに抗歯石剤として歯磨剤に使用されているエチドロン酸と同様の歯石予防効果があるという。また、実験に使われたはちみつ液の濃度は、小さなカップ一杯(100cc)のぬるま湯ティースプーン一杯程度だというから、手軽に利用できそうだ。
歯周病は歯や口腔内の健康だけでなく、糖尿病や心臓病、脳卒中、肺炎、慢性腎疾患、骨粗しょう症、さらには癌、早産などの合併症を伴うことが報告されている。いくら長生きしても、身体中に病気が蔓延していては目も当てられない。楽しく、長寿を全うするためにも、早い内からのプラークコントロールを心掛けたいものだ。(編集担当:石井絢子)