高齢化が増加の一途をたどっているが、これが医療機関にも深刻なダメージを与えているようだ。近年は、都市部の「診療所」「歯科医院」は競争が激化しており、医療機関の休廃業・解散件数が増加傾向にある。これに加え、開業医の後継者難や代表者の高齢によって廃業や撤退を余儀なくされる病院が少なくないからだ。
株式会社帝国データバンクは、2006年度から2013年度の間で休廃業・解散した医療機関について集計・分析し、9日、その結果を発表した。それによると、2013年度に休廃業・解散した医療機関は303件。集計を開始した2006年度以降で最多となった。
種類別にみると、「休廃業」が211件、「解散」が92件となっている。業態別にみると、「病院」「診療所」「歯科医院」ともに11年度に休廃業・解散が急増している。この背景は、都市部に集中する「診療所」「歯科医院」の競争や、過疎地の病院・医師不足が一因となっているという。これに加え、開業医の後継者難や代表の高齢化が挙げられるとした。
病院は 20 件(前年度比33.3%増)となり 06 年度以降で 3 番目の水準となった。これまで救急医療や高度な専門知識を要する公益性の高い医療は、自治体(公立)病院を中心に行われてきた。しかし、自治体・私立病院では、医師不足や高コスト体質といった問題を抱えており、病院経営が難しくなってきている。
また、近年は、診療報酬制度の改定の流れを受けて官から民への動きが進んでいる。補助金や助成金で運営資金を補ってきた都道府県立病院は経営環境が厳しさを増しており、淘汰の波が押し寄せているという。
診療所は 243 件(前年度比 7.0%増)となり、06 年度以降で最多となった。施設数の増加(2002 年~2012 年で 5333 施設増)で競争が激化している。 また、厚生労働省は、医師が自宅や高齢者施設などに訪問する「在宅医療」に対して手厚い診療報酬を設定していたが、民間の紹介業者が高齢者施設で暮らす患者をまとめて開業医に紹介し、見返りとして仲介代金を受け取る「患者紹介ビジネス」が横行したことを受けて、今年 4 月から訪問診療に関する点数が大幅に引き下げられた。今後は、在宅医療を専門とする診療所への影響が避けられないと分析した。
歯科医院は40件(前年度比 11.1%増)となっており、06年度以降で最多となった。こちらも施設数の増加(2002年~2012年で3401施設増)に伴う競争が激化している。都市部を中心に、駅近の立地で夜間診療、高級感がある内装にこだわる歯科医院や、患者が全額を自己負担するインプラントや歯を漂白するホワイトニングなど、審美専門の歯科医院が急増した。
利幅が大きいインプラント治療に参入する歯科医院が急増したものの、07年にインプラント治療中の患者が死亡した事故を機に、インプラント治療の患者離れが広がった。また投資コストが少ないホワイトニングは価格競争が激化し、採算割れとなるケースも少なくない。多くの歯科医院では、同業との競合や院長の高齢化、設備投資の失敗といった問題を抱えており、今後も淘汰が進むことが予想されるとした。
現在、病院や介護施設を運営している複数の法人を、一定地域ごとに一つに束ねるホールディングカンパニー(持ち株会社)形式の新型医療法人(非営利)設立構想が動き始めている。ホールディング化することで、医療と介護の連携や、資金調達・患者の受け皿としても効率化を図ろうという狙いだ。
一方、同じ地域でホールディングに属さない開業医などの診療所は後継者問題に加え、患者の流出など事業環境への影響が懸念される。今後も、医療機関の休廃業・解散件数は高水準で推移していくだろうと予測している。(編集担当:慶尾六郎)