シェアするだけで環境に貢献? 社会を変えるかもしれない「Fun to Share」

2014年08月02日 17:27

 日本列島に本格的な夏が到来し、連日の猛烈な暑さで夜も寝苦しい日々が続き、一日中エアコンを稼働させているという家庭も多い。こうなると当然、電力消費も増加してくる。気になるのはやはり、今年の夏の電力供給だ。

 2011年の東日本大震災以降、原発の停止に伴って、真夏の電力不足が懸念されている。しかし、これまでのところ大きな混乱もなく過ごせているのは、国民的な節電意識の高まりと、それを受けて公共施設や企業の事業所、工場などで大幅な節電対策が行われているからだ。そして、原発の代わりに火力発電所がフル稼働していることも大きい。

 経済産業省管轄の電力需給検証小委員会の報告によると、震災前に比べて火力発電所のうち、老朽火力発電所の割合は10%から20%へと倍増しており、計画外停止の件数も1.7倍に増えているという。つまり、決して安心できるような状況ではなく、これからも引き続き、厳しい需給状況を想定した電力需給対策が必要なのだ。

 また、火力発電所には二酸化炭素の排出量が多いという課題がある。二酸化炭素の排出量が増えると、地球温暖化にも拍車が掛かるといわれている。温暖化が進めば、ますますエネルギーが必要となり、泥沼の状態に陥ってしまう。

 この負の連鎖を食い止めるために、今、世界中で低炭素化社会に向けた様々な取組みが行われている。日本でも、個人や企業が独自に取り組むだけでなく、それぞれが持つ「知恵」をシェアすることで低炭素化社会への意識を広めようという面白い試みが始まっている。環境省が推進する低炭素社会実現に向けたキャンペーン「Fun to Share」だ。この取組みに参加している企業や地域などの団体は日々増えており、すでに900近くに上っている。

 「Fun to Share」は、簡単にいえば、情報の拡散だ。まず、「Fun to Share」に賛同する企業、団体、地域社会等が、具体的に保持している、もしくはこれから実現を目指している、環境技術や製品、サービス、取組みや制度といった様々な低炭素アクションについて「Fun to Share 宣言」を行う。そして、その情報を受け取った個人が「いいね」「面白い」「素敵」と思ったものを自分たちでも実践しながら、ツイッターやフェイスブックなどのSNSサイトなどで積極的にシェアしていくというものだ。

 たとえば、日産リーフで世界のEV市場の48%ものシェアを誇る日産自動車の宣言は「ワクワクできる100%電気自動車で、低炭素化社会へ」。現在発売中のEV車のみならず、全国で実施している超小型の電気自動車の実証実験やEVレーシングカーの開発など、車づくりを通した低炭素な街づくりを提案している。

 また、2013年に生活時のエネルギー収支をゼロにする「グリーンファーストゼロ」の販売を開始した住宅メーカー最大手の積水ハウスも、「『グリーンファースト』の推進による快適な暮らしで、低炭素社会へ」を宣言。高断熱などによる省エネと太陽光発電や燃料電池による創エネでエネルギー収支ゼロを実現し、CO2排出量の9割を削減できるこれらで街を構成する「スマートコモンシティ」を推進している。

 同社の取り組みで特徴的なのが、家庭用燃料電池を積極導入している点で、採用率は6割近くと住宅会社の中でも突出している。太陽光発電の搭載量にも制約がある日本の屋根事情からも、太陽光発電と燃料電池を組み合わせたダブル発電による発電量の確保は有効なため、それによりCO2排出量差し引きゼロを目指すというメッセージが受け入れられたといえる。

 「Fun to Share」に賛同する自治体も多い。県をあげて地球温暖化対策に取り組んでいる茨城県の宣言は「『地域の力』で、低炭素社会へ」。簡易な環境マネジメントシステム「茨城エコ事業所登録制度」の創設や、「いばらきエコチャレンジ」プロジェクトの推進など、「県民総ぐるみ」をキーワードにした省エネ行動を推進している。

 「Fun to Share」のサイトを見てみると、興味深い取組みが多いことに感心させられる一方、その情報がバラバラに発信されていたら、そんな活動を知ることすらもままならないことに気づく。情報がまとまっていることの意味は大きいのではないだろうか。さらに、それをSNSなどでシェアするだけで、世界中の何百、何千という人たちに情報が拡散されていく。皆が面白いと感じれば、その取組みへの認知や関心はもちろん、低炭素化社会への意識も自然に高まっていくだろう。

 「Fun to Share」には、目標に向かって無理をしたり我慢したりするのではなく、楽しく快適に過ごしながら、低炭素化社会の実現に向けたアクションを起こそうという精神が根本にある。確かに、シェアするだけで気軽に社会に貢献できて、もしかするとそれが社会を大きく変える原動力にもなるかもしれないと思うと、ちょっとワクワクする。(編集担当:藤原伊織)