家庭用を含め都市ガスの小売市場を全面自由化、政府自民党が方針を固めたか

2014年07月30日 13:36

TokyoGas

都市ガス全面自由化が達成されれば、ガス会社から電力を購入して、電力会社からガスを買う逆転現象もある得る

 2016年の全面的な電力小売自由化と合わせ、業界の垣根を越えたエネルギー企業競争を促進し、都市ガス料金の低価格化やガス会社から電力も購入できるなどサービスの多様化を目指す考えだ。利用者は料金、サービスなどを比べてガス会社を自由に選べる。来年の通常国会に関連法案の提出を目指す。2年の準備期間を経た後、2017年に自由化する。

 このガス自由化によって、火力発電用の液化天然ガス(LNG)を大量に扱う東京電力などの大手電力会社や石油元売り会社などが、ガス事業に参入する可能性が高い。逆にガス会社も、すでにLNG火力発電など電力事業の強化に乗り出している。

 経済産業省では業種を超えた競争が加速し、料金抑制や新サービスの登場が期待できるとみている。しかしながら、国の認可制になっているガス料金の自由化だけは「新規参入が思ったほど進まない場合、現状の独占大手が値上げに動く恐れがある」ことを懸念し、年末まで議論を続ける。

 また、都市ガス事業を「小売り事業」と、ガスを送るためのガス導管を敷設・管理する「導管事業」のふたつに再編する。現在の事業者は「小売り」と「導管」を兼業しているが、導管事業については今後も地域独占を認めると同時に、新規参入組に導管などのガス設備を公平に使わせるよう義務付けることとなる。NTTが電電公社時代に電話線を独占し、民営化に伴って通信各社に開放したことを思い出せば分かりやすい。

 都市ガス事業者はLNGを主成分とする都市ガスを、地下に埋めたガス導管を通じて工場や家庭に供給する企業で、ガス事業法で「一般ガス事業者」という。全国に約200社あるとされるが、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社で、販売シェアの約7割を占める。半面、80%の事業社は従業員100人以下の中小企業だ。業界内の企業格差がこれほど大きい産業もめずらしい。

 すべてのガス会社が自由化に対応できるのか、安全対策が不十分にならないかを見極めるため、小規模事業者などの営業地域については、準備期間をより長くすることも検討するという。(編集担当:吉田恒)