政府の教育再生実行会議は7月3日、「小中一貫教育学校(仮称)」制度の創設などを柱にした提言書を首相に提出した。これは、義務教育の9年間を一体の教育課程とするものである。文部科学省は、中央教育審議会(中教審)に諮り、来年の通常国会に関連法案を提出予定。
政府の教育再生実行会議は7月3日、「小中一貫教育学校(仮称)」制度の創設などを柱にした提言書を首相に提出した。小中一貫校は、義務教育の9年間を一体の教育課程とするものである。文部科学省は、中央教育審議会(中教審)に諮り、来年の通常国会に関連法案を提出し、2016年度から小中一貫校の創設を目指す予定だ。
その提言の中身を見ていこう。その問題意識は、小学校から中学校に進学する際、学校生活の変化になじめないために不登校、いじめの発生が急増する問題が出ていること(いわゆる「中一ギャップ」)、学制の原型が導入された時代と比べて子供の身体的成長や性的成熟が約2年程度早期化していること、さらに小学校への英語教育の導入をはじめとして学習内容の高度化が進んでいて学校段階間の移行を円滑にするような学校間連携や一貫教育の推進が求められることなどがある。
そのため、小学校から中学校段階までの教育を一貫して行うことができる小中一貫教育学校(仮称)を制度化し、9年間の中で教育課程の区分を4-3-2や5-4のように弾力的な運用が可能になるという提案だ。
すでに一貫校を実施している自治体のホームページを見るとより具体的にその効果が見えてくる。「思春期を迎えている小学校5・6年生に、中学校の組織的な生徒指導の仕組みを活用した課題支援ができる」、「小学校のきめ細やかな指導と中学校の教科の専門性を相互に生かすことで児童・生徒の学力向上に結びつく」、「異年齢の交流の機会の増大は、子どもたちの人間的成長を促す」といった指摘がされている。特に、合同授業を実施した場合、お互いの気づきや協力を育めたなどの学習効果などが報告されている。
こうした現場の声を活かした改革、そして多様化は望ましいと思われる。しかし、二つほど疑問がある。第一に、小中一貫校の事例についての定性的な評価は多いが、定量的な評価が少ないこと。第二に、こうした制度改革も大事だが、制度の運用(教育内容やプログラム、成果・満足度や学習意欲の向上など)も改革すべきなのではないかと筆者は考えている。(編集担当:久保田雄城)