利益を得るため故意にしていた。しゃぶしゃぶ・日本料理店『木曽路』などを全国展開する木曽路〈本店・名古屋市〉は大阪、神戸、愛知の3店舗の料理長がメニューの一部で松阪牛や佐賀牛と表示しながら、別の安価な国産牛を用い、7000食以上を提供していた。同社が14日に公表した。
そこで明かされたのは「3店舗の料理長が材料費を抑え、利益を得ようと故意に行った」偽装だった。
材料仕入れ先の業者が生産番号などを偽装し松坂牛だとか、佐賀牛だとか表記して提供していたので信じて使っていたというのなら、木曽路自体が被害者だし、仕入れチェックに甘さがあったと、今後のチェックの在り方などの改善で再発防止が期待できる。
しかし、利益確保のため、材料偽装をあえて行っていたとなれば、これは消費者を欺く確信犯で、商業モラルの点はもちろん、厳密には表示違反でなく、売買契約上の詐欺にあたる行為ではないのかと感じる。利益追求の行き過ぎた行為をどう裁くのか、社内の自浄能力で再発防止にどのような対応が行えるのか注視したい。
今回の問題発生が全くの料理長個人の行為なのか、企業体質なのか。偽装期間は同社発表では平成24年4月1日から今年(26年)7月31日までの2年4か月にわたった。昨年は大手百貨店、飲食店、有名ホテルなどでも食材偽装が相次ぎ発覚し、社会問題になり、食材偽装追放への取り組みが進み始めたばかり。その間も偽装表示が続けられていたことになる。
問題に根の深さが感じられるのだが、こうした問題が発生した要因は消費者センターも分析してほしい。もともと、大阪の北新地店が7月に消費者センターの査察を受けたことがきっかけで、木曽路が全店を対象に社内調査したことから偽装が明るみになったということだ。査察がなければ偽装が継続した可能性も否定できない。
今回、北新地店では6880食を出していた。紹介には「木曽路が目利きした、最高級の松阪牛をお楽しみください」と松阪牛を売りに、しゃぶしゃぶなどのメニューを前面に出している。実際には和牛特選霜降り肉を使用したという。「料理長は利益目標を達成するためと説明している」との報道がある一方で、松原秀樹社長は「それほど大きなプレッシャーを彼に与えていたとは認識していない」と記者会見で話す。
利益を得るために自ら分かっていながら食材偽装し、販売した場合には確信犯として、行政は「虚偽表示」での対応でなく、詐欺罪を視野に厳しい対応を検討していくことが再発防止に必要ではないか。無くならない偽装表示にそう感じているのは筆者だけだろうか。(編集担当:森高龍二)