好調の百貨店業界 2014年の動向は?

2014年01月08日 20:04

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13年度の百貨店売上高は1997年度以来、16年ぶりの市場拡大となりそうだ。

 2013年は百貨店業界にとって激動の年だった。まず、アベノミクスによる景気の高揚感と株高による資産効果、さらに冬のボーナスの増額など、プラス要素の影響が大きかった上に3月までの間に消費税増税前の駆け込み需要も見込めることから、13年度の百貨店売上高は1997年度以来、16年ぶりの市場拡大となりそうだ。とくに、高級腕時計をはじめ、貴金属、宝飾品、美術品などの高級品の販売が好調で、全体を牽引した。デフレ経済の中、イオングループ<8267>などの大型ショッピングモールに顧客を奪われていた形の百貨店業界だったが、デフレ脱却の兆しと共に、ショッピングモールにはない高級品や品揃えを求める客が戻りつつあるようだ。

 ところが、その一方で、百貨店の信用を地に貶める出来事もあった。13年秋、ホテル業界に端を発した、いわゆる食品偽装、誤表示問題である。三越伊勢丹ホールディングス<3099>の日本橋三越や新宿伊勢丹などのレストラン14店舗で誤表示が発覚しことをはじめ、高島屋<8233>、大丸松坂屋、そごう・西武、小田急百貨店など、大手百貨店で軒並み誤表示の実態が表面化した。その多くは百貨店直営ではなく外部テナントによるものだったが、百貨店のブランドを信用している顧客にそんな言い訳が通用するはずもなく、さらには百貨店自身が取り扱う「おせち料理」でも誤表示が明らかになったことから、言い逃れのできない大問題に発展した。とくに、おせち市場は500億円とも言われる巨大な市場であるため、そのダメージは計り知れない。各百貨店では現在、徹底して内部調査を進めているものの、一度失ってしまった信頼を取り戻すのには時間が掛かってしまうだろう。

 また、増税後の反動を心配する声も、当然ながら多い。97年に消費税が3パーセントから5パーセントに増税された際、増税前の駆け込みで3月は売上高が23パーセント増加したものの、その反動で4月は14パーセント、5月は5.1パーセント、それぞれ落ち込んだ。今回の増税でも同じような状況が予想されるため、各百貨店では対策に追われているようだ。例えば、大丸と松坂屋ホールディングスの共同持株会社であるJ・フロント リテイリング<3086>は、傘下の大丸松坂屋百貨店で、退職金を上積みする選択定年制度を採用することで200人規模の人員削減を実施するうえに、約770人を出向先に転籍させ、合わせて約1000人、金額にして約38億円規模の人件費圧縮を図ることで対応するとしている。

 確かに、人件費を抑えることで増税の影響を吸収しようという意図は分かる。しかしながら、消費者が百貨店に求めているのは、何も商品だけではないし、ましてや商品価額の割引などではない。消費者は百貨店のサービスを求めているのだ。それを失ってしまったら、大型のショッピングモールやインターネットの通販などとの差別化が難しくなってしまうのではないだろうか。
 
 子供の頃、百貨店に足を踏み入れると、それだけでわくわくした。そんな経験を持つ中高年は多いだろう。ところが今、そのわくわく感は大型ショッピングモールや通販サイトに奪われてしまっている。経費削減、合理化だけではない、百貨店ならではのわくわく感と安心感、そして信頼を取り戻し、増税後も一時的ではない好況を維持してもらいたいものだ。(編集担当:藤原伊織)