最近目にする、「大学発ベンチャー企業」。これは、人口の減少により少ない労働力で日本が経済的に存在感を出すために安倍内閣のもとで提唱された「日本再興戦略」の重要な柱の一つとしても挙げられている。これまで進められてきた、大学改革と同時に、研究成果の効率的な事業化を行い、民間企業への技術移転とイノベーションを果たす起爆剤として、最近注目が集まっている。
企業情報、企業調査を行う、帝国データバンクは、8月8日大学発ベンチャー企業の実態調査結果を発表した。この調査によると、業種別で見るとサービス業(295社)が最も多く、次いで製造業(207社)、上位2業種8割以上を占めるという調査結果がでた。また今回の調査を詳しく分析すると、いくつかの課題が浮かんでくる。大学発ベンチャーが企業としては小規模のままで留まっている現状と、研究先行による費用負担などで設立当初からの黒字化は困難であることが明らかになった。また、大学数で他を圧倒する東京都に集中しているという現状も浮かびあがってきた。
安倍内閣が提唱する「日本再興戦略」、これを実現するためには、東京の一極集中ではなく、地域経済を活性化する新産業の創出が必要不可欠ではないだろうか。「日本再興戦略」と同日閣議決定された、「科学技術イノベーション総合戦略 2014」 においても、総合科学技術会議が中心に府省や分野ごとにバラバラであった政策をまとめ上げる「戦略的イノベーション創造プログラム」や「革新的研究開発推進プログラム」などが創設され、すで に動き始めていることが紹介されている。このような国を挙げての政策の下で、大学で研究された技術などが、民間への移転は今後進められていくとみられる。
その一方で、本調査結果からも明らかなように、設立5年未満の大学発ベンチャー企業においては、黒字化が難しい現状があることも忘れてはいけない。政府にとって、「日本再興戦略」を推し進めるのであれば、東京一極集中している大学ベンチャー企業の地方移転を促す新たな政策と、短期間で成果を上げるための助成金によるサポートなど、大学ベンチャー企業を支援する具体的な施策が必要になってくるのではないだろうか。「日本再興戦略」は国民誰もが願っていることであり、政権に期待する声があることも事実である。地方活性化が叫ばれて久しいが、ここ10年ほど目立った成果はあげられていないのではないだろうか?今後の具体策に期待するとともに、日本再興戦略が成功することを願っている。(編集担当:久保田雄城)