先般、総務省から、スマート・ジャパンICT(情報通信技術)戦略が発表された。これは、日本経済の持続的成長・発展に向け、情報通信技術を利用し、モノ・サービスを繋げることで新たなイノベーションの機会を創出するというもの。対象として、地域の活性化(ICT街作り、スマート・アグリ、G空間シティ)、社会的課題解決(医療、教育、防災、ベンチャー支援をはじめとする8項目)や東京オリンピック・パラリンピックを重点項目として、国家戦略特区を活用した成長、発展を目的としている。このスマート・ジャパンICT戦略は、情報通信技術を利用して、新たな機会の創出を生むことは間違いないが、この戦略を実現するうえで非常に大きな問題は、ICTの基盤として考えられているビッグデータ・オープンデータ・パーソナルデータなど基盤を支える情報自体の取り扱いと活用方法ではないだろうか?一方、政府はビッグデータの利用に関して、独立した第三者機関を設けて指導や立ち入り検査などを行ったうえで、「個人が特定されないようにデータを加工した場合は本人の同意を得なくても第三者に提供できる」という内容を盛り込んだ個人情報保護法の改正を行うとしている。
個人情報が特定されないデータであれば、トレンドやユーザー属性などすでに現在においても多数存在し、企業において活用されている。ただ、第三者機関チェックのみの防波堤では、日本市場の有益なデータを国内での使用にとどまらず、海外への二次、三次利用など、当初は想定しえない情報流出や漏えいなどの温床になりかねないという一抹の不安もある。スマート・ジャパンICT戦略の中核を担うビッグデータは、取り扱う業種、業態によって、必要となるデータが必然的に変わってくる。統一したデータ内容であれば、新規ビジネスやイノベーションの創出は遅くなるだろう。一方、全てのデータを横断的に取り扱うことが出来るようになれば、さまざまなメリットが創出されるのは間違いない。このスマート・ジャパンICT戦略自体に異議を唱えることはしたくないが、運用、規制を始め企業サイドのみの視点ではなくその基盤を支える一般消費者への情報セキュリティの面からも深い分析と考察が必要なのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)